郷土に愛着と誇りを持つ グローバル人材の育成で成果

第9回ESD大賞受賞校の実践 和歌山県立田辺高等学校

1. ユネスコスクール加盟(2017)まで

2014年度に文科省からスーパーグローバルハイスクール(SGH)のアソシエイト校に認定された。申請段階から「グローバル人材とは何か」を議論し続け、生徒がグローバル人材に育つ条件として「ローカル=地元」に目を向け、郷土への愛着と誇りを持った者が、世界市民の一員としてグローバルに活躍できる人材になると考え、「温郷知新」「Think Locally, Act Globally」をテーマに活動を開始した。

ESDを担う分掌(推進室)を設置し、総合的な学習の時間を中心に、情報科や家庭科の授業と内容を連携させながら、さらに他教科でもESDを意識した授業づくりを推進している。

特にフィールドワークとプレゼンテーションを繰り返し実施することにより、自ら主体的に行動し、俯瞰的・複眼的視点で物事を分析・考察を行い、自らの言葉で論理的に語り提言できる人材の育成を目標としている。

ユネスコ世界遺産を持つ地域でもあり、ESDを意識した教育計画の中からユネスコスクールの理念と合致し、15年に申請、17年度に加盟となった。

2. 主な取り組み
(1)郷土に愛着と誇りを

生徒は9割以上が大学に進学するが、近隣に大学がなく必然的に県外に出る。毎年、新入生にアンケートを実施すると、8割以上が地元に愛着を持っているものの、地元の特徴、特色をよく知らない、という結果となる。卒業までに地元を知り、地元に誇りを持った「心の芯」のある人になってほしいとの願いから、14年度から地元に飛び出して学ぶ複数のプロジェクト学習を本格化させている。

▽狙い=郷土への愛着と誇りを高め、異なる文化や価値観を持つ集団の中で認められる日本人としてのアイデンティティを確立し、持続可能な社会づくりに取り組む態度を育む。

▽身に付けたい能力や態度=気付きの力、気に留めておく態度」「仮説を立てる力と勇気」「巻き込み力、対話力、交渉力、積極性」「協働(コラボレーション・パートナーシップ)」

(2)地元自慢プレゼン

入学後にまず個人単位で「地元の魅力発見」をテーマにフィールドワークとプレゼンテーションを行っている。3カ月間かけて、地元についてインターネットには掲載されていない、人に知ってほしい地元情報を調査し、あえて手書きでの紙芝居プレゼン法(KP法)にて全身で発表させている。

(3)グループでの取り組み

「直面する課題解決に向けて」「地元の強みを生かすには」を大テーマにグループ単位で課題発見・課題解決型の探究活動・課題研究に取り組む。

「グループの誰かが」ではなく「グループ全員で」を常に意識させ、KJ法を用いたブレーンストーミングで全員が意見を出し仮説を設定し、田辺市をはじめ地元のさまざまな組織・企業・商店などの協力と支援のもとフィールドワークを実施している。

(4)姉妹校との交流

アメリカの姉妹校の受け入れや派遣に合わせ、相互に地元の魅力を相手の言語でプレゼンテーションを行う取り組みを行っている。

(5)アナログな取り組み

生徒はデジタルネイティブの世代で、中学校でインターネットやパワーポイントなどの扱いを修得しており、依存しすぎる傾向が見られた。パソコンやパワーポイントを使わずに、あえて紙と手書きでの発表を指示し、紙芝居プレゼン法やポスターセッションなどで繰り返し人前で発表する機会を設けている。

ネット上で基礎調査は行うが、そこにはない情報の収集を義務付けている。特に総合的な学習の時間では、入学後すぐに3カ月間のフィールドワークを行い、自らの言葉でアナログなKP法で発表する。唯一無二の発表となり、自信につながっている。

3. 生徒有志による「SEEKER」の活動 
(1)SEEKERの設置

学校全体の取り組みを行う過程で、生徒有志から「地元のことをより深く知り考えたい」「地元を通じた国際交流をしたい」という意見が多く寄せられ、生徒主体で地元の探究活動を実施する「SEEKER」が組織された。 「Think Locally, Act Globally」を活動指針に、各地域のユネスコスクールやユネスコ部の活動を参考にして精力的な活動を行っている。

「SEEKER」は探求者の意味で、「Suggestion(提案)」「Explosion(調査、実地踏査)」「Exaltation(高めること)」「K→Cooperation(協力)」「Education(教育)」「Revitalization(再生、復興)」に由来する。校内での位置づけは、生徒会と同じような委員会組織となる。

(2)活動内容

世界遺産の熊野古道を訪れる外国人観光客に焦点を当て、実際に熊野古道を歩き、外国人観光客や地元の人にインタビューを継続的に行っている。活動の中では田辺市や観光協会と連携して外国人観光客に対するアンケートなども実施している。同時に保全に向けた活動として、熊野古道の整備を、民間企業と協働で実施している。

世界にも目も向け、OECDからの援助を得た活動(OECDイノベーションスクール2030)ともリンクし、熊野古道の観光客に対する調査と同時に、カナダのオンタリオ州、ドイツのコンスタンツなどの世界遺産のある地域の高校を訪問し、世界遺産に対する地元の意識や保全について熊野古道と比較するフィールドワークも実施している。

4. 成果と課題

地元を知ることから始まった活動が発展し、地域課題研究などから人口減少、少子高齢化、乱開発などの持続可能な社会づくりを阻害する課題を改めて認識した。その解決ため、フィールドワークなどで地元の魅力を徹底的にピックアップし、それを課題解決の糸口につなげていった。

外国人を含めた観光客と地元住民が、お互いに持続可能な関係になるようにすることが今後の課題である。