7つの神話との決別 21世紀の教育に向けたイングランドからの提言

書名の「7つの神話」とは、イングランドの教育に影響を及ぼす「進歩主義的」な教育観を指す。「事実学習は理解を妨げる」「プロジェクトとアクティビティーが学びの最良の方法である」など、同国で信じられてきたこれらの「神話」に対し、一つ一つ科学的根拠を織り交ぜた反論を示している。

松本佳穂子ほか 監訳/大井恭子ほか 訳
東海大学出版部
2800円+税

神話の一つ「教師主導の授業により生徒は受け身になる」に対しては、子供の自立性を達成する最善の方法が「常に」子供が自立的に学ぶことだと仮定している点が誤りだと指摘する。子供主導の問題解決型学習に偏り過ぎると、子供の脳の作業記憶(ワーキングメモリ)に大きな負担をかけると問題視する。知識量が乏しい中で探求学習だけを続けると、脳の作業記憶に強い負荷がかかり、長期記憶のための知識集積につながりにくくなるとし、非効率な学びに陥る危険性に警鐘を鳴らしている。一定の知識の蓄積が自立的な学びを深めるベースになると訴え、教師が規則立った反復学習を実施する意義などを挙げているのが興味深い。

その一方で、著者は21世紀型スキルに代表される自立的な問題解決力や創造的思考力などの育成自体を否定している訳ではない。認知科学を踏まえた、より確かな学びを実現したいという思いがあふれており、今後の教育の在り方を考える上で貴重な示唆が詰まっている。