ESDとカリキュラム・マネジメント(2)問題解決能力を育てる

NPO法人日本持続発展教育推進フォーラム理事 手島 利夫

「生きる力」の中で最も重要であるにもかかわらず、指導・育成が困難なのが、思考力・判断力・表現力を備えた問題解決能力の育成である。

これは、塾や入試で出される問題を効率よく解く力とは全く別物である。他人から出された問題の答えを解くのではない。ある状況の中から問題に気付き、その問題点を仲間と共有し、整理・明確化したら、その解決に向けて共に学び、対話と試行を通じて深め、答えのない問いに向き合っていく実践的な力なのである。知識の詰め込みだけでは決して育たない能力である。従来の学校教育ではあまり見られなかった学び方も必要になる。

そのような力を備えた人間の育成という課題の解決に向かって、学習指導要領がようやく改訂され、カリキュラム・マネジメントや主体的・対話的で深い学びに向けた指導法の改善が法的拘束力をもって実施されるのである。

これを学校現場が納得して、来年度に向けて教育の在り方そのものを見直し、改革を断行するように方向付けるためには、教育委員会の意識の高さが重要である。水だって低い所から高い所に向かっては流れない。時代観・世界観を踏まえ、危機意識を持って学校教育を指導できるよう、学び直しもしなくてはならない。校長をはじめとした教育管理職も教員も、新しい時代の教育者として生まれ変わるつもりで学び直さなければ通用しないのだ。

「カリキュラム・マネジメントは、今までなかったのでよく分かりません」とか「主体的・対話的な授業なんて受けたことがなかったのでどうやったらいいのか分かりません」とか、四の五の言っているときではないのだ。日本という国の生き残りを懸けた教育改革を進めるのである。職を懸けて全力を尽くした先に、新しい教育の道が見えてくるはずである。新しい時代に向かう「知識・理解+α」の教育の成果を子供の姿で示しつつ、共に進めるよう保護者・地域にも心を開き、連携を図るのである。

問題解決能力育成のポイントは、「子供の学びに火をつける」である。子供たちの常識を揺さぶり、驚きや疑問を湧かせるような問題との出合いを演出し、学びの方向付けをするのが教師の役割である。子供たちは、その解決に向けて調べ、学び、相談し、実践し、まとめ、振り返る。そうした取り組みを楽しんだり、自分たちの問題として価値を感じたり、その実践の成果に誇りを感じることが重要なのである。自分が本気で取り組んだことならば、だれに向けても堂々と発信できるはずである。初めはそのような機会をさりげなく提案してあげてもいいかもしれない。

「学びに火をつける」段階については、別表を参照していただきたい。

単元の導入時に、子供の学ぶ心に火がつかなかったら、その単元の学習は教師による教え込みや強制に終始するしかない。一見すると活発に学習しているように見えても、教師の望む姿を装い、高い評定を求めての行動だとしたら、自己肯定感など育つはずもない。

この段階で重要なことは、子供が疑問を口にしたら、「いい疑問ですね。疑問を持てるって素晴らしいですよ。忘れないように書いておこうか」とすかさず評価することである。「それはね…」と答えを教えるのは、子供の学びを阻害する愚策だということを覚えておこう。

(日本ESD学会副会長)