第9回ESD大賞受賞校の実践 スタートアップ賞 横浜市立日枝小学校

川の汚れを自分ごととして 持続可能な社会の創り手を育むために
1. 全ての教育活動が未来を創る教育に

日枝小学校は横浜市南区にあり、内海だった所を埋め立てた起点となる位置にある。街には川が流れ、繁華街が隣接している。外国につながる児童は81人、その内外国籍児童は51人に上る。この数は全校児童の約2割に当たり、その国も、中国(台湾)、韓国、インドネシアなど10カ国にわたる。

2016年度からは、横浜ESDコンソーシアムのESD推進校として指定を受け、持続可能性を意識した教育活動を展開している。

18年度は学校目標である「生き生き日枝っ子」の具現化を目指し、どのような姿を「生き生き日枝っ子」として求めていくか話し合った。

同校は生活科・総合的な学習の時間を重点的に研究しているが、「生き生き日枝っ子」の姿はどの時間にも関連させ、ホールスクールアプローチのビジョンとして位置付けた。学校の全ての教育活動をESDに染めていこうとする考え方である。地道に取り組んできた教育活動をESDの視点で価値付けすることで、持続可能な社会の創り手を育んでいることを自覚していくわけだ。

地域にしっかりと関わりながら、子供に寄り添って作られるさまざまな単元は、教科学習の内容と関連したり、SDGs、環境教育、キャリア教育、伝統文化、地域活性化等と関連したりしている。全ての教育活動が、未来を創る教育をテーマとしている。

2. 学区内の川を学習の場として
川の様子を観察する子供たち

具体的な実践事例として、4年生の取り組みを紹介する。4年生は18年度の「ともだち」(総合的な学習の時間)の時間に学区内を流れる大岡川のごみについて学習した。

川があるものの、川で遊ぶ体験はなく、川に親しんでいるわけではない。それでも、川を視界に入れて生活しているため、満開の桜が映る川面や、クラゲがたくさん発生する川の様子、そして、埋まっている自転車などの大型ごみや、ごみが流れていく様子などが風景となっている。

子供たちは、従前に社会科で大岡川が実は入り海(陸地に入り込んだ海)だったことを学んでいる。また、クラゲなど海の生き物がいることから、「大岡川は、本当はまだ海なのではないか」という疑問を持ち、その探究を始めた。

NPOが主催する、川に自作のこいのぼりを架ける企画に参加し、大岡川の様子を観察、クラゲや群れになった魚、大きな魚を発見した。それと同時に川に浮いているペットボトルのごみや、レジ袋などの白いプラスチックのごみも発見した。さびて貝殻の張り付いた自転車やタイヤ、オートバイが数台、川に埋まっている姿を発見した。生き物が生息することを確認した。

次に、大岡川に詳しい、水中カメラマンから話を聞いた。大岡川は汽水域といって、山から流れる川の水と海から流れてくる海水とが入り交じった川であるという説明を受けた。また、大量のごみがあることについても説明を受けた。ビニール袋を餌と間違えて食べ、死んでしまった亀の話、川のごみはまちのごみが浮遊して流れ込んでくるということ、その川のごみは海に流れ海の生き物を困らせているという話などを聞くことができた。そこで、同氏が主宰するNPOが月1回のペースで行っている、川と川周辺のごみを取る活動に参加することとなった。

学校近くで唯一川に触れ合える場所、アクアパークに行き、観察も継続。海にいるフナムシを発見したり、カニや小フグを捕まえたり、魚の群れを確認したりと汽水という川の様子と、その中で暮らす生き物の存在を体感した。同時にごみの多さを目にすることとなった。

また、ごみを取る活動に取り組む中で、川のごみはポイ捨てだけでなく、多くは知らず知らずのうちに町のゴミが流れこんでくることを実感していった。たばこの吸い殻の多さにも驚いた。

これらのごみはどこから来たのか。集めたプラスチックごみの分析から、レジ袋との関連をつかみ、自分たちもごみと無関係ではないことを知った。レジ袋をもらわないには、エコバッグを活用がするのがよい、という考えにたどり着く。また、ペットボトル、ストローなどについても興味を持ち、「ストローを使わないためにはどうしたらよいか」など多様な学習を行った。

3. 成果と課題

この学習を通して、子供たちは多くのことを学び、多くの成果を上げた。

ただ、川の環境を自分ごととして捉えさせたいと考えていたが、これはなかなか難しい実践であった。ごみを取る活動をしても、「自分たちではない誰かが汚すから活動を行っている。だから、町の人たちに川を大事にしようと伝えたい」という考えにつながってしまうという。

アクアパークで生き物に触れることにより川を楽しむ体験を味わった。さらに川の上流に行って川にいる生き物と戯れ、下流との川の違いも体感した。ここから、川を知り、川を好きになることを目指した。川を好きになり、大事に思うようになれば、川のために自分がやれることは何か、やりたいことは何かについて深く考えるようになる、と期待しているという。

同校では、子供たちの川を大事に思う思いが基盤となり、そこにすむ生き物との共存を考え続けられるよう支援をしたい、としている。