(円卓)「総合的な探究の時間」とESD

尚絅学院大学特任教授 見上 一幸

最近、高校からESD(持続可能な開発のための教育)のリード役を担っているユネスコスクールについて、尋ねられる。

新学習指導要領の「総合的な探究の時間」への対応を模索する中で、高校の関心が向いてきたからのようである。これまで、ESDは分かりにくいと敬遠されがちだったが、2015年に「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連サミットで採択されたのに加え、新学習指導要領でもESDが「持続可能な社会の創り手」の育成において重視され、手掛かりが与えられたためかもしれない。

学校がESD・SDGsに取り組む上での不安に、新たな課題への教員の負担感と、教科の専門の枠を超えた生徒の疑問に対応する教員側の戸惑いがある。しかしすでに取り組んでいる従来の課題を「持続可能な社会の構築」という視点で捉え直すとESDになる、と納得できれば、負担感への不安も軽減されるように思われる。

「探究」の良い点は、生徒が学校での学習を、「やらされる」から、自ら「やりたい」に変えられることでもある。各教科の知識・技能を基本にしながらも、教員は生徒にとって探究の過程での良き相談相手、ファシリテーターであるべきである。

各学校は、ESDの視点でそれぞれの地域の課題に探究的に取り組むことができる。「探究」の学習には、自らの課題を設定し、情報の収集、整理、分析、考察、まとめ・表現というプロセスが含まれる。教科の知識や技能に加えて、クリティカル・シンキング、さらにICTの活用も含めて専門的なスキルやコミュニケーション能力の育成を図ることができる。

国連の「ESDの10年」やGAP(ESDに関するグローバル・アクション・プログラム)といった取り組みを経て、現在、高等学校でも優れたESD実践事例が蓄積されてきている。国内では高校生の活動が地域産業に貢献した例も多く、北欧ではバルト海を囲む国々の高校生が海の環境保全に取り組む国際的な「バルト海プロジェクト」などが知られる。

企業のSDGsへの関心が高まり、学校を支援するステークホルダーも広がりつつある。高校生には、内向きの考えでなく、教科の基礎学力の上に「総合的な探究の時間」を通じて海外にも目を向け、交流を活発にして「持続可能な社会の創り手」の理念の達成を期待したい。