(円卓) 「寛容性」を育む

中国学園大学副学長 住野 好久

今、「非認知能力」が注目されている。人生の成功には認知能力=学力だけではなく、非認知能力が大きな影響を持つことが研究によって明らかにされたからである。

非認知能力には、感情を制御する力、諦めずに最後までやり遂げる力、他者と協働する力など、多様な資質・能力が含まれている。新学習指導要領にも「学びに向かう力、人間性等」という形で、育成を目指す資質・能力に非認知能力が位置付けられた。

では、今、学校で子供たちに最も育むべき非認知能力は何だろうか。私は多様性を認め、多様性と共生できる力=寛容性であると考えている。

というのも、子供たちや社会はますます多様化しているにもかかわらず、学校はなお単一性を追求しているからである。

「基礎基本の徹底」が追求され、「〇〇スタンダード」が「標準」ではなく「規範」として強制される中で、子供たちはみんな同じように振る舞い、同じようになることが強要されている。

多様化している子供たちはこうした学校に適応できずに不登校となり、多様化する社会に適応できないまま、引きこもりやニートにならざるを得なくなっている。

子供たちには多様であることの豊かさ、楽しさ、美しさを実感させたい。

そのためには多様な人が参加できる活動を多様に展開し、その中で自分とは異なる考え方、やり方、振る舞い方、言い方などと出合わせ、相互に理解し合い、相互に折り合い、多様性のよさを味わう経験をつくり出す。異質と出合い、多様性を理解するにとどまらず、その多様性を生かして、これまで経験のない活動をし、これまでにないアイデアや作品をつくり出すとき、多様性は価値となり、不可欠なものと実感されるようになる。

こうした価値観が形成されるようになると、寛容性は単に他者と接する際の「作法」にとどまらず、多様性を認め、多様性と共生できる力となり、人間性に刻み込まれていく。

多様性の尊重と寛容で平和な持続可能な社会の創造は、ESD(持続可能な開発のための教育)の基本的な理念・目標の一つである。ESDが学校教育に浸透することで、全ての子供たちに寛容性という資質が育成されるのを願っている。