(円卓)「複雑な問題」に取り組むSDGs探究

東京都市大学教授 佐藤 真久

筆者は、拙著『ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ』(佐藤・広石拓司、みくに出版)の前文を、悪魔探しのおとぎ話から始めている。

悪魔探しのおとぎ話は、勇者が悪魔退治をすることにより、村民が豊かな暮らしを送れるようになるストーリーとして、多くの人が認識しているだろう。

本書においては、このおとぎ話が成立する理由として「問題の原因が悪魔」と明確であり、悪魔を倒せば問題が解決できると分かっていたから、と指摘している。

今、社会で起きているさまざまな問題、例えば子育てストレス、介護負担、貧困、地域活性化、気候変動、国際紛争などの問題についても、「悪魔探し」が行われがちである。しかし現代は、何が悪いのか、何が原因なのか、一つに定めづらい「複雑な問題」が多い。

われわれは、難しい問題に出合うと、何かを悪者にする、もしくは問題を分解して要素にするなど、単純化して考えがちである。

複雑な問題は、複数の要因の相互作用の結果として生じているため、単純化したアプローチでは解決できない。

近年、注目されている持続可能な開発目標(SDGs)は、このような社会の複雑な問題に対応したものであると言えよう。

つまり、SDGsは、個々のS・D・Gに分けて考えるものではなく(個別対応型)、この複雑な問題にどのように対応していくかを問うている(テーマの統合性、同時解決性)、人類へのメッセージと捉えることができるだろう。

新学習指導要領には「持続可能な社会」という文言が入り、多くの学校現場でSDGsと関連付けた学習活動が始まっている。

複雑な問題に向き合うためには、多様な視座・視点・メンタルモデルの活用、探究プロセス(課題設定、情報収集、整理・分析、まとめ・表現)、問いの設定・共有が重要になる。

複雑な問題に取り組むSDGs探究は、これまで別々に取り扱われてきた問題を関連付け(統合的)、問題や課題の原因や関係を捉え直し(批判的)、グローバルな文脈とローカルな文脈を関連付けながら(文脈的)、関わる個人・組織・社会の変容を促す(変容的)ことを可能にするだろう。