(円卓)台風15号の教訓

 敬愛大学国際学部教授・教職センター長 向山 行雄

千葉市にある敬愛大学。房総半島全域から学生が通う。9月9日に上陸した台風15号は、停電と断水、家屋の損壊、農業施設破損など千葉県に甚大な被害をもたらした。

倒木による電柱の破損、その陰には放置された森林の劣化がある。荒れた森林の木々はもろい。強風は里山を脅かす。水を吸わぬ土壌は、土石を抱えきれず麓へ押し出す。

「蛇落地悪谷(じゃらくじあしだに)」と古来呼ばれてきた北広島のニュータウン。2014年8月、大きな土石流が住宅をのみこんだ。テレビでそのさまを見てひらめいた。神話の「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)」とは土石流のことだったのだ。1本の胴体から分岐する8つの大頭(おおがしら)。子供の頃に聞いて、ただの作り話と思い込んでいた私。後日、知人と出雲の「ヤマタノオロチ伝説」を調べる巡検に出た。名産の砂鉄で鋼を作るため、薪材(しんざい)として山の木を切る。裸山を雨がたたく。土石流が日常化する。

スサノオという英雄が現れて、オロチを退治。赤い血(鉄の赤さび)が流れ、イナダヒメ(稲田姫)を助ける。つまり、有力な支配者が現れて治水工事を行い稲田を作る。そんな出来事を、古人は伝承や神社、地名に残し、後世に伝えてきた。

学習指導要領(社会)は「神話・伝承を手がかりに国の形成に関する考え方に関心をもつこと」と示す。しかし、ほとんど実践されてこなかった。戦後教育の中で、神話への誤解があった。その誤解を払拭(ふっしょく)できなかった私たち教師の責任は大きい。

地球上で発生する自然災害の被害額の2割近くを日本が占め、欧州全体の被害額より格段に大きい。自然災害はわが国の国土の地理的条件と大きく関係する。
15年9月、利根川に流れ込むはずの鬼怒川の堤防が決壊して茨城県常総市で氾濫。東京を貫通する最大の人工河川「荒川」はもともと「荒ぶる川」として江戸を縦横無尽に流れていた。古人は、蛇落地悪谷、鬼怒川、荒川などの地名にどのような思いを託したのだろうか。

国土の強靱(きょうじん)化は一朝一夕にできる事業ではない。後世のために着実に進めていかなければならない。学校での防災教育はそのための基礎づくりになる。私たちは、台風15号を教訓に、決意を新たにしなければならない。

(全国連合小学校長会顧問)