第9回ESD大賞受賞校の実践 ユネスコスクール最優秀賞 宮城県多賀城高等学校

ESDの視点から防災・減災学習を 被災地から未来型教育モデルを発信

1. はじめに

2011年3月11日に発生した東日本大震災。多賀城市では、死者188人および関連死が30人を数えた。

大震災を受け、宮城県では同年10月に宮城県震災復興計画を策定、防災教育の充実を復興の重点とした。教育委員会では、「みやぎ学校安全教育基本指針」を策定し、14年2月に、大震災から学んだ教訓を確実に次世代に伝承するとともに、将来国内外で発生する災害から多くの命と暮らしを守ることができる人材を育成するために「防災系学科設置基本構想」を示した。

多賀城高等学校は、この基本構想に基づき「災害科学科」(1クラス・40人)を16年度に開設し、普通科(6クラス・240人)と合わせて防災・減災に関わる学習を推進している。

「被災地から発信する未来型の教育モデルづくりや防災教育の促進」を目指し、全国への学習内容を発信できるパイロットスクールとしての役割を担っている。次の①震災で最も大きな被害を受けた宮城県だからできる教育の展開②大震災の教訓を次世代に伝承し、将来の災害対応に活用③将来発生する災害時に、社会のさまざまな分野で役割を果たせる人材の育成――の3点を基軸としている。

「災害科学科」では、災害に関する科学的見地を持った学習を通して、他者の命や暮らしを守ることにつなげる教育を行っている。

防災に関する基礎的な知識・技能を習得する一般的な防災教育は「普通科」「災害科学科」両科共通で行うこととし、教育課程の編成と課外活動を含めた学習内容を実践(カリキュラム・マネジメント)している。

防災学習では防災上考慮すべき事項を学際的・教科横断的(クロスカリキュラム)にかつ継続的に学習するためのプログラム開発を行った。多くの人命と暮らしを将来にわたって守る上で基本となる学習内容は、ESDの考えと一致し、防災・減災を切り口に課題を自らの問題として捉え、一人一人が考え、実践していく課題解決能力を身に付ける学習となる。

こうした考えから特に、学習内容を整理し、防災学習、自然科学学習、国際理解学習を3つの柱とした授業やボランティアを含めた課外活動を外部機関・講師を数多く活用しながら行っている。

2. 実践内容
(1)合科科目の設定とクロスカリキュラムの実施

災害科学科開設に当たり、防災・減災・安全、環境などの観点から社会生活とのつながりを理解し、自己や他者の安全を考えて主体的に行動する能力を育む教科「くらしと安全A」と、生死を分ける情報収集と発信の内容を理解し、技能を活用する能力を育むことを目指す教科「情報と災害」の2科目を「災害科学科」だけでなく「普通科」においても実施する基幹科目として位置付けた。

災害科学科では防災・減災を学習素材とした合科的な専門科目を設定し、普通科では普通教科においてクロスカリキュラムを実施した。

(2)代表的な防災・減災学習

①通学防災マップ=津波浸水域が示されたマップ2枚に通学路を書き込み、学校と家庭それぞれで保管し、災害時に通信が途絶えたときの帰宅や送迎の可否に用いる。

②津波波高標識設置活動=多賀城市内に達した津波波高を、住宅の壁や塀に残っている痕跡から測定し、その調査結果を最寄りの電柱や電信柱に表示する活動。

③防災ワークショップ=発災前、直後の行動、被災後の生活などを想定したさまざまなワークショップを大学教授・学生、建設コンサルタント社員などをファシリテーターとしてワークショップを行う。

(3)代表的な自然科学学習

①浦戸実習、栗駒実習=海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究員や東北大学の教員を講師とし、地球ダイナミズムの観点から行う野外実習。

②つくば研修=防災科学技術研究所(NIED)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、産業技術総合研究所地質標本館(AIST)などを訪れ、施設見学、講義に加え防災・減災に関わる実習や実験を行う。

(4)国際理解学習

①被災地案内国際交流=海外から被災地を訪れる方に震災時の様子や復興の様子を共に現場に赴きながら伝え、津波波高標識を設置した地域を案内する「まち歩き」などを行う。

②JICA連携事業=タンザニアに赴任していた元青年海外協力隊員による講義や、JICA東北主催のフォーラムにおけるワークショップへの参加、アジアやアフリカからの研修員を受け入れた特別授業や情報交換を行う。

③海外高校生や大学、研究者との交流=ハワイやインドネシアの高校生とのインターネットを用いた交流。環太平洋大学協会の学生やASEAN諸国の留学生との防災に関する意見交換など。

(5)ボランティア活動

高校3年間を通して、ボランティア活動を35時間以上実施。活動に対して1単位の認定を行う。地域からの要請に応えるほか、自らが課題を発見し、企画・実行して地域活性化を目指す(PBL型)試みも盛んになってきている。ボランティアの種類は防災、復興をはじめとして多種多様に及んでいる。

3. 成果と課題

ESDで取り組む複雑な課題解決に取り組む人材を育成する上で生徒の変容を今までよりも深く広く知るためには、多様な形成的評価方法を体系的に組み合わせる必要がある。これまでのパフォーマンス評価にとどまらない多様な評価を試みている。

多様な評価の一つとして、災害時の能力測定のための形成的評価の開発を東北大学災害科学国際研究所と協力して行っているが、1年間防災・減災の学習に取り組んだ結果、「人をまとめる力」「問題に対応する力」「人生を意味付ける力」「生活を充実させる力」が有意に上昇する結果が得られている。

活動について、「第3回国連防災世界会議」「世界防災フォーラム」「世界津波の日高校生サミット」などで報告。さらに、同校主催の「東日本大震災メモリアルday」では全国で防災・減災を学習する高校生を招待し、ワークショップやポスター発表を行い、意見交換を行っている。

今後も学校全体としてESDの視点から防災・減災学習に取り組み、新たな教育課題に挑戦し、これらの成果を発信していく、としている。