共に生き、共に育つ

石川県で障害児通園施設を運営してきた著者は、40年以上にわたり「共生」とは何かを考え続けてきた。実践家であり、障害のある子供の父親でもある彼は、これまで出会った子供たち一人一人から、そのヒントを教わってきた。

徳田茂 著
ミネルヴァ書房
2000円+税

「先生、うちに帰れていいね」。

ある日、施設に入所している子供から発せられた切実な声を聞いた。なぜ障害のある子が社会から隔離されなければならないのか。なぜ他の子供と同じように地域の学校に通えないのか。当時、まだ多くの人がそのおかしさを認識していなかった中、社会の「当たり前」と戦い続けた。

そして著者自身もまた、そんな社会の「常識」にとらわれていたと気付かされる。自分の子供に障害があると知り、ショックを受けたのだ。それまで多くの障害のある子供たちと接してきたにもかかわらず、当事者になると分かって絶望してしまった矛盾とどう向き合うべきか。著者のまなざしは常に、目の前の子供たちと自分自身、そして社会の在り方に向けられる。

日本でもようやく、共生社会やノーマライゼーションという言葉が聞かれるようになった。しかし、現実はまだ、ただのスローガンにとどまっているのではないか。2016年に相模原市の障害者施設で多くの犠牲者を出した殺人事件とそれを巡る社会の反応の数々は、まさに象徴的だ。心地よく響く「共生」という言葉は、現代を生きる私たち一人一人に、本気で向き合う覚悟を突きつけている。