名言で語る「日本の歴史」授業

日本の歴史に残る出来事について、人物の名言を手がかりにまとめた一冊。歴史の裏側に気づかせてくれる豆知識が豊富に掲載されており、歴史好きなら一気読みしてしまいそうだ。

高橋茂樹 著
黎明書房
1800円+税

例えば、古代最大の内乱だった壬申の乱の項目では『万葉集』に収められた大伴御行の賛歌「大君は 神にしませば 赤駒の 腹這う田居を 都と成しつ」を取り上げている。中大兄皇子と大海人皇子による兄弟同士の権力闘争は中大兄皇子の死後、流血の末に帰趨(きすう)が決まり、天皇中心の強力な律令中央集権国家の基礎を築いた大海人皇子が、強大な権力を握り、天皇の絶対的な権威を確立した様子がうかがえる一首だ。その背景を丁寧に説明することで、名言を味わう楽しみを教えてくれる。

ページをめくると、壬申の乱に関する豆知識として同じく『万葉集』から額田王と大海人皇子の恋歌が紹介されている。兄である天智天皇(中大兄皇子)の后(きさき)の一人で、元恋人でもあった女性との艶やかなやりとりは、多くの歴史小説に描かれてきた名場面だ。額田王を巡る兄弟の三角関係が壬申の乱の背景にあったかどうか史実は定かではないが、日本史を学び始めた生徒たちには興味をそそられる内容だろう。

こうした歴史の楽しさを教えてくれる名言と豆知識の組み合わせが、本書には、古代から終戦後の出来事まで、51項目も盛り込まれている。日本史の授業を展開するタネ本として活用できそうだ。