(円卓)持続可能性の二つの社会的テーマ

大阪府立大学人間社会システム科学研究科教授 伊井 直比呂

私たちは、持続可能性の問題を大きく二つの観点から見ることができます。一つは、世界人口が76億人を超えて進展する「拡大社会」の問題です。もう一つは日本など人口減少国などにみられる「縮小社会」の問題です。

この二つの態様の特徴は大きく異なります。そしてそれに対する私たちの向き合い方も大きく異なるでしょう。

例えば、簡潔に列挙するならば前者は、拡大社会によるエネルギーや地球環境問題、また食料問題や気候変動に起因する社会の強靭(きょうじん)化の問題のほか、世界中で多様化する人々の生活や在り方にとって欠くことのできない人権、公正、平和、教育、貧困克服、ジェンダーの平等などです。つまり、人間開発(Human Development)に関わる問題群です。これらは自国の利益や自文化を超えた「連帯」と、一人一人の価値転換を伴う向き合い方が必要でしょう。

一方、後者の場合は、例えば、全国に分布する消滅可能性都市やすでに進行している限界集落にとどまらず、社会を支えてきた多様な仕組みの喪失危機が挙げられます。教育のある一端に限って述べると、閉校や統合によって実質的な教育を受ける機会や教育へのアクセスがどれだけ減少してしまったことでしょう。まさに生活圏の「地域」が学習の場ではなくなってきています。既存の地域概念とは異なる新たな地域の創出が必要なのかもしれません。

他にも、年金などにみられる国民の負担増加と財政上の多くの問題群はセーフティーネットの網の目を拡大しつつあります。つまり、負の循環は、経済だけでなく教育の質や福祉の多様さにさえ、将来にわたって影響を及ぼしかねない事態に陥りつつあります。そして、これらに向き合うには、老年世代、大人世代、若者世代の各世代がお互いに学び合い、知恵と思いを共有する、世代を超えた「協働」が重要になっていると言えるでしょう。

最後に、私たちがこの二つの異なる持続可能性の問題に対して共通して問うべきは、「いったい誰のための持続可能な社会や未来なのか」ということです。自分が取り残されないだけでなく、誰一人取り残さない社会のために、連帯と協働を通した一人一人の未来への役割感に気付けることが、学校教育や生涯教育の役割となってきています。

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