(鉄筆)もう十数年も前になるが、……

もう十数年も前になるが、北九州市にある松本清張記念館で、清張氏使用の机に生前愛用の万年筆が数本、今も使っているがごとく置かれているのを見たが、これと同じ光景を昨年、岩国の作家宇野千代氏の生家でも見た。

彼女の書斎の和机にも、削られた同一の鉛筆十数本が鉛筆皿にきちんと並べられ、すぐにでも原稿が書き始められる雰囲気であった。それを見ながら文筆を生業(なりわい)とするプロの書く道具への思い入れを強く感じた。

昔、大工の棟梁(とうりょう)は、弟子の賃金を仕事後の弟子の道具箱(使った道具の後始末)を見て査定したと聞いたことがある。……

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