SDGsを総合で探究 3年間で「主体的な学び」深める

高等学校賞(ESD大賞) 広島県立安古市高等学校

はじめに

同校は、広島市安佐南区にある全日制普通科高校である。世界遺産「原爆ドーム」から北へ10キロのところにある毘沙門台と呼ばれる高台に立地し、生徒は1000人(24クラス)を超える。ユネスコクールに登録されて6年目を迎えている。

具体的な実践内容
(1)取り組みの経過

同校では、10年前から総合的な学習の時間において「持続可能な社会の実現をめざして」という統一テーマで講演会やディスカッションを実施していた。ユネスコスクール加盟を機にユネスコ憲章の理念をさらに敷衍(ふえん)する活動に取り組むようになった。

具体的には、2015年に文科省の同年度の「日本/ユネスコパートナーシップ事業」の一環としてACCU(ユネスコ・アジア文化センター)がコーディネートした「ESD Foodプロジェクト」に参画した。ユネスコスクール(国内7校とインド5校)による「食」をテーマとした国際協働学習であった。このプロジェクトを通してESDの基礎的な視点を学んだ。

15年は、国連でSDGsが採択された年であり、日本語訳が出る前に生徒が原文(英文)を訳出して、国際社会の抱える課題について考える機会を持った。

16年には「ESD重点校(サステイナブルスクール)」に選定され、取り組みの深化を目指した。同時期に広島県では「学びの変革」(「主体的な学び」の創造)に向けた取り組みが全県的に始まっており、同校でもESDを踏まえ、生徒自身が主体的・対話的な学習プロセスにより学びを深めていく課題発見・解決型の学習に向けた「学びの変革」に取り組んだ。

(2)総合的な学習(探究)の時間の取り組み
①総合的な学習(探究)の時間の概要

ポスター発表会で意見交流を行う

1年次は、探究の基礎的スキルを習得している。SDGs基礎学習を行い、課題設定、情報収集・分析を重ね、新聞の切り抜き作品を制作し、発表する。

2年次は、個人で課題を設定し、探究活動を行う。生徒全員が探究の過程と結論、成果と課題を示す資料を作成し、ポスター発表会を実施する。

3年次には、2年次での探究活動とSDGsとの接点をさらに考察し、その成果をSDGsに生かす方策として提案。その一部を2・3学年生徒全員と保護者に対してプレゼンテーションする機会を設けている。

②1年次の取り組み

SDGs基礎学習では、3年生が1年生の教室に出向いて授業を行う。3年生は教師役となり、これまで学んできたことを、クイズやゲームを用いながら班討議・発表を促すなどさまざまな工夫を凝らして後輩に伝えている。

その後1年生は、各班で課題設定・探究活動に取り組み、その成果を新聞の切り抜き作品として発表する、という流れである。

③2年次の取り組み

2年次は「知の冒険」と名付け、個人での探究活動に力を入れている。

多様なテーマ設定のもと、1年間をかけて探究する。1学期にテーマ設定と計画書を作成。夏季休業中と2学期に本格的に活動し、年末には探究の経過と内容をまとめた論文とポスターを作成する。1月末に全員参加で体育館を使ってポスター発表会を開催する。発表会での意見交流を参考にして論文を修正し年度末を迎える。

探究活動の集大成としてパネルディスカッションを開く

④3年次の取り組み

3年次には3年間の探究活動の集大成としてパネルディスカッションを実施。

生徒による担当者会議で運営されており、SDGsの中から討議したいテーマを選定し、各クラスでの事前学習・討議を経て学年全体で実施する。

法曹、大学、マスコミなど各界の専門家に参加してもらい討議の広がり、深化を目指している。

(3)国際交流(国際協働学習)の取り組み
①姉妹校との交流

オーストラリアの姉妹校との交流は20年に及ぶ。近年は語学研修やホームステイに加え、平和・人権学習や地球環境問題をテーマにしたワークショップやディスカッションを継続して実施している。

②広島県主催プログラムへの参加

広島県主催の「ひろしまジュニア国際フォーラム」「グローバル未来塾 in ひろしま」に生徒が参加し、平和構築に向けた国際協働学習に取り組んでいる。

③ユネスクール活動

文科省委託事業「ESD Foodプロジェクト」「サスティナブルスクールプロジェクト」に継続して参画した。

国内の学校とインド・インドネシアを結んでの国際協働学習であり、前者では食を巡る諸問題について探究し、成果を互いに報告・討議した。

後者では、ホールスクールアプローチに向けた学校間交流に取り組み、「ホールスクールアプローチデザインシート」を作成し教育活動の全体像を再確認すると共に、UNESCO Associated Schools Networkによるビデオ制作に協力した。

(4)地域連携の取り組み

従前から地域住民と連携し2つの取り組みを実施してきている。

一つは、学校周辺のごみや雑草の除去などを行う地域清掃活動。

もう一つは、地域の方の指導で取り組んでいる文化継承活動である。近隣の山から切り出してきた松や竹などを使って門松を作る活動である。

3年間の探究活動の概要

5年前に近隣の全ての自治会長と代表生徒が地域課題について話し合いを行った。高齢化、独居家庭・空き家の増加などがコミュニティーの機能低下や防災上の大きな懸念事項として取り上げられ、これらの地域課題には、学校が自治会、社会福祉協議会などと連携して対応することとなった。

地域のコミュニティー復活を目指した「ふれあいセンター『絆』」が設立された際には、美術部員が建物への壁画装飾で協力した。

14年の豪雨災害では大きな被害が発生した地域であり、実践的な防災・減災については地域と共に学び、災害発生時には具体的な行動がとれることを目指して、自治会、消防署、学校が合同で防災訓練を実施している。

これらの取り組みを通して地域との連携が強化されてきている。

今後の課題

多様な切り口で諸課題に関する認識を深め、解決策を模索し、具体的な行動へとつなげてきたが、まだ十分ではないと評価している。特に深刻度を増す地球環境問題については、有効な緩和策と適応策の策定・実行について、今後もより一層検討を重ね、実践していくとしている。

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