(鉄筆)最近、電子書籍リーダーを……

最近、電子書籍リーダーを購入した。希望する本が即座に配信され、画面は明るく、しかも、軽い。早速、読みたい本を3冊ばかり購入し、読み終えたのだが、読後感がなんとも空虚で読んだという実感が湧かない。電子書籍に慣れないせいかとも思うが、どうも、それだけではないようだ。

確かに、電子書籍は心地よく読める。しかし、本の持つ重量感や装丁、ページをめくる感触や匂い、時には前に戻り、後半を眺め、作者の息遣いを感じるといった本そのものの良さを味わい感じることが難しい。簡便だが、その反面、本や読書の本質を損なっているように思えてならない。

ところで、英文学者の寿岳文章氏は、その著『本の正坐』(芸艸堂)の序で、今日のニュー・メディアに直面する書物の論議に触れて、〈長い年月をかけて造りあげてきた文化遺産である書物を、ポイ捨ての消費財なみに扱うようなことは、絶対に許されてはならない自殺・自滅の愚の極み〉だとして、〈書物は、その内容と外装において、人間のロゴスとパトスが要請する最善の耐久文化財であらねばならぬ〉と述べている。

寿岳氏が言うように本は、内容はもちろん、製本や装丁なども含めた本全体に価値を持つのであり、単に読めればよいというものではないのである。

学校休校の続く中、オンライン授業の導入が脚光を浴びた。その必要性と有効性に異議を挟むものではないが、これとて電子書籍が本の代替であるように、本来の授業の一部代替にすぎまい。便利さとの引き換えに大切なものを失う愚を犯さないよう心したい。

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