(鉄筆)外出の自粛が……

外出の自粛が叫ばれるようになったのは3月下旬を過ぎてからであろうか。それ以来、電車にもバスにも乗らず自宅周辺の範囲内での生活が続いている。緊急事態宣言発出後は外出範囲だけでなく外出時間もせばめられた。

わが家では買い物は24時間営業のスーパーへ客がまばらな朝6時に行き、散歩は昼間だが人通りが少ない場所を選ぶようになった。いずれも「一人外出」だ。

ところがこれが身近なものに目を向けるきっかけとなった。例えば、街のあちこちに咲く花たちの存在だ。3月の梅やツバキに始まり、4月は桜や菜の花、5月は藤とそれまであまり気にしていなかった彼らが気になりだした。これらの花はいずれも日本古来の花ばかりだが、その関連で今度は久しぶりに田辺聖子さんの『新源氏物語』(新潮社)を読み直そうという気持ちになった。

花のことを気にしながら読むと源氏物語には実に多くの花が登場する。また、光源氏が愛する女性は花の名前に関係している人間が多い。藤壺、葵の上、夕顔、末摘花……。今回の自粛生活は日本人に生まれてきたことをうれしく思う自分の再発見にもつながった。

各報道では自粛生活による弊害を多く紹介している。家庭内虐待の増加、「自粛警察」と呼ばれる人々によるいわれのない誹謗(ひぼう)・中傷等々……。

緊急事態宣言が解除された後も庭や街角にひっそりと咲く季節の花をめでる楽しみを持つのもよいのでは。6月は色鮮やかなアジサイや優雅な香りを放つクチナシが憂鬱(ゆううつ)になりがちな心を和ませてくれるはずである。

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