(円卓)JAPAN e-Portfolio運営停止

教育評価総合研究所代表理事 鈴木 秀幸

「JAPAN e-Portfolio」の運用が停止された。このポートフォリオに関して、中教審教育課程部会の児童生徒の学習評価に関するワーキンググループで議論になった際、私は委員として懸念を述べた。というのも、ほぼ同じようなポートフォリオを英国でも1990年代に作成し、うまくいかなかったからである。

これの正式名は「Records of Achievement」という。JAPAN e-Portfolioとの違いは紙媒体であったことである。新しい試みとして英国で話題になっていたため、私はこのポートフォリオについて、英国の学校などでの実態を調査したことがある。

このポートフォリオの推進者の熱意や長所の指摘とは裏腹に、学校現場では作成に時間や労力のかかること、このポートフォリオの利用者が実際にいるのかも疑問であるとの声を聞いた。生徒自身にも意見も聞いたが、「時間の無駄」とまでいう生徒もいた。

結局2000年代に入ると、ごく一部の学校を除くと使われなくなってしまったのである。最大の問題は、作成にも、利用者がポートフォリオを読むにも、時間と労力がかかることであった。

JAPAN e-Portfolioも同様の問題を抱えていると考えた。これを選抜の資料として用いる場合には、ポートフォリオに入る資料が多過ぎて、利用する大学らの読む負担が大き過ぎると思われたのである。たとえ、その利用が総合型選抜や学校推薦型選抜に限られるとしても大きな負担である。簡略化しないと英国の二の舞になるなどと懸念を述べたのである。

ポートフォリオを選抜などに用いるには、ポートフォリオ評価とする必要がある。ポートフォリオは資料を何でも組み込むのに対して、ポートフォリオ評価は、生徒の能力や態度を代表する作品などを選択・要約してポートフォリオに組み込むのである。

ポートフォリオ評価は、調査書では分からない生徒の能力や態度を示す利点があるので利用することが望ましいだろう。今のところ「主体的に学習に取り組む態度」に関する記述の選択・要約方法は未開発であるため、当面は総合的な探究の時間や理数の探究活動の成果物などを2~3点選択してポートフォリオに組み込むことが長所を生かす方法と考えられる。

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