(円卓)令和の学校教育に必要な視点

聖心女子大学現代教養学部教育学科教授 益川 弘如

2020年9月28日、中教審初等中等分科会より「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(中間まとめ(案))」が示された。副題は「~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」とある。

中間まとめ(案)の中には、「個別最適な学びの成果を協働的な学びに生かし、さらにその成果を個別最適な学びに還元するなど、個別最適な学びと協働的な学びの往還を実現することが必要である」とし、目指すべき学びの在り方が副題になっている。

しかし、このまとめ方では「個別最適な学び」と「協働的な学び」が独立して存在することが強調され、個別最適な学びはさらに、基礎的・基本的な知識などを確実に習得させるための指導を強化する「指導の個別化」と、学習の基盤となる資質・能力などを土台として個々の子供に応じた学習活動を提供する「学習の個性化」に分けた整理となっている。

この枠組みを大事に授業の単元を設計すると、単元序盤で「指導の個別化」、中盤で「学習の個性化」、終盤で「協働的な学び」を行わせて単元全体を振り返り「往還させた」とする教師が一層増えるのではないかと危惧する。

「協働的な学びの成果を個別最適な学びに還元するなど」と書かれているにもかかわらず、例えば国語の文学作品を読み解く単元では、まず文法や表現を教授し、次に一人で得意な表現方法でまとめを作成させ、最後に発表しあって相互評価するなどであろうか。

認知科学・学習科学では、一人一人なりに学ぶ力を発揮し、社会的な文脈の中で他者との対話を通して自己の知識を構成していく社会的構成主義の考え方が一般的である。「個別最適な学び」と「協働的な学び」は往還ではなく、一体的に捉えることが重要である。

再び国語を例にとると、文学作品を読み、読み方や解釈などを対話し比較することで、自分の解釈が明確になり、それを自分の得意な表現方法でまとめていく中で、新規の文法や表現も学び定着していくという流れだろうか。

帰納的学習環境論とも呼ばれるこの考えに基づくと、私が副題を名付けるとしたら、「~全ての子供たちの可能性を引き出す、協働的な学びの実現を通した個別最適な学び~」となる。