(円卓)学校危機管理能力と適応能力

東京都市大学付属中学校・高等学校長 長野 雅弘

本校の難関大学合格実績は伸び続けている。教育情報サイト「朝日新聞EduA」によると「早慶上理MARCHが10年前の133人から531人と398人増えた。合格者の内訳を見ると、早稲田大が10年前の20→68に(+48人)。慶應義塾大が5→41(+36人)、明治大が25→131(+106人)、東京理科大は17→70(+53人)と大きく伸びている。東大、京大を含め、これは日本一の伸び率だ」とある。

背景には何があるのか。私は赴任以来、生徒の学力に関する悉皆調査と教師の学びに関する調査を実施し、指導・助言をしている。今年度もこの流れでと思っていたところコロナ禍が襲来した。日本の教育史上初の全国一斉臨時休校要請があり、ほとんど全ての学校がその要請に従った。人と人が直接対面で向き合い、刺激し合い、学び合うという学校の日常が突然なくなった。

「学びを止めない」を合言葉に本校の教師たちは想像力を働かせ、話し合い、迅速に行動し始めた。4月初めには中高校の全生徒約1600人の自宅に宅配便を手配し、教科書や資料集・問題集などの副教材、各自が工夫を凝らした課題、励ましのメッセージを添えた学年通信などを届けた。5月からは授業動画の配信を開始。動画作成に関しては多くの教師が未経験であったが、工夫を凝らし合って作成した授業動画は700本以上になった。早朝から深夜まで、撮影に取り組む毎日。動画だけではなく、ウェブでのホームルームや個人面談を行い、徹底して生徒に寄り添い話を聞き続けた。

教師自らの学ぶ姿勢や子供たちに対する愛情は伝わると証明されている。学校再開後の生徒たちの多面的な成長が順調であるのが、証しになっている。コロナ禍で明らかになったことは、今後教師には「学校危機管理能力」「適応能力」が必要とされることである。学校危機管理能力とは、予想ではなく想像に基づき、(1)早期の丁寧な対応(2)組織的な対応(3)誠意ある対応をする。適応能力とは、この大きな変化の潮流の中で将来幸せになるために最も必要とされる能力で(1)学び続ける(2)多くの人と会う(3)情報を収集して編集する。これらを身に付けるべく日々学び続けている本校の教師たちが、生徒の精神と学力の伸長に貢献できているのは自明の理である。

(東京都市大学客員教授)