教育新聞編『FUTURE EDUCATION!』 17日発売

教育新聞が特集「クローズアップ」「先を生きる」などで行った、教育界のイノベーターへのインタビューなどをまとめた本『FUTURE EDUCATION! 学校をイノベーションする14の教育論』(岩波書店、1800円+税)が11月17日、岩波書店から出版された(一部地域・書店は19日発売)。岩波書店のサイト(購入可能なネット書店のリンク有り)はこちら

教育新聞編
岩波書店
1800円+税

イノベーターらの革新的な理論と実践手法、最先端の取り組みなどに迫った14編を収録。教育関係者以外も読みやすい、「教育が面白くなる入門書」になっている。

テーマは「教育の究極の目的とは何か」「多様な社会を生き抜く力とは」といった根源的なものから、「2050年を生きるための教育」「成功や幸せの価値観を変えるための教育」などの教育観や実践、学校現場で進む意識改革と組織改革、そしてコロナ危機を経て、学校と学びはどう変わっていくべきかという考察など、「未来の教育への羅針盤」となるもの。

また、学習進度2倍というAI教材や、児童生徒が自分の習熟度に合わせて利用できるオンライン学習サービス、100万人の子供たちが視聴者のYouTubeの授業動画など、新時代の学習方法にも迫っている。

各記者が担当したインタビュー記事から、個人的に特に印象的な「ひとこと」を抜粋するとともに、本書の読みどころなど「私のひとこと」を記した。


小木曽浩介(編集部長) 
#01 野依良治 人類は進歩し続けなければならない ノーベル賞受賞者が語る教育の究極の役割

本来、なぜ教育があるのか。まず、個々の人々が豊かな百年の人生を送るため。国の存立と繁栄をもたらすため。さらに人類文明の持続に資することが最も大事で、この根幹を忘れてはならないと思うわけです。

#02 ブレイディみかこ 「誰かの靴を履いてみる」こと 多様な社会を生きるための想像力

教員の仕事は、お金を稼ぐだけではなく、それ以外の部分が大きい。教育によって子供が変わる、この国の未来をつくれるというプラスαのある職業だと思うんです。

#03 日野田直彦 2050年を生きるための教育 「世界を救う勇者」を育成したい

個人的には、「グローバル人材」ではなく、「ワクワク人材」と表現したい。ワクワクし、イキイキし続ける人間が、今の世の中には求められているのです。

#06 木村泰子 「教員の学校」を断捨離 全ての主語を子供に変える

私の答えとは、学校は「先生が教える所」ではなく「子供たちが学ぶ所」というものです。今は教師の「働き方改革」ばかりが注目されていますが、本当に必要なのは子供の「学び方改革」ではないでしょうか。

#11 髙橋一也、堀尾美央、正頭英和 Think Globally,Act Locally グローバル・ティーチャーが語る世界の最前線

その地域で、その先生にしか解決できないミッションが、必ずあります。世界中に先生という存在がいるのには、そうした意味があると思っています。

【私のひとこと】

教育新聞が注目する教育界のイノベーターたちが、この1冊の中に勢ぞろいしています。14の教育論を読んでいただくと、あらためて身の引き締まる思いになったり、勇気づけられたりすることと思います。ブラックな職場と言われ、よくないニュースが続く学校と教育界ですが、その状況の中でも「未来を信じるための一冊」として、未来志向のインタビューをまとめた「教育とそれに関わる全ての人を応援する本」です。教師、教員志望者、教育関係者はもとより、保護者、教育に関心がある大勢の方々に、本書を読んでいただけることを願っています。


佐野領(編集委員)
#09 神野元基 進度2倍、 AI型教材キュビナの衝撃 問い直される授業と学び

いま、何よりも必要なのは、子供たちにも先生にも時間を作ることです。

AI型教材キュビナを開発した目的は、詰め込み型教育の学習量を増やすことではありません。学習指導要領の範囲内で知識・技能を効率よく習得し、未来のための時間を作るAI型教材の開発を目指しています。

なぜなら、子供たちと先生に時間を作ってあげることが、一番のソーシャルインパクトにつながっていくと思うからです。

【私のひとこと】

新しい技術の登場は、いつの時代でも諸刃の剣だと思います。例えば、SNSはコミュニケーション手段として大変便利なものですが、だんだん自分の考え方と近い意見ばかりに触れるようになり、米大統領選であらわになった社会の分断と対立をあおる結果にもなりかねません。

人工知能(AI)の学習への活用にも、同じような危うさがあると思います。AIはさまざまな学習を効率化できますが、これは長所にも短所にもなり得ます。暗記型の知識を詰め込み、従来型の受験勉強に合わせてAIを使うこともできるでしょう。でも、そうやって従来型の知識や技能を身に付けても、それで得られる仕事は近い将来、ロボットやAIに置き換えられてしまいます。高校の普通科改革が求められるゆえんです。

これからの予測困難な時代を生き抜いていく力を身に付けるために、子供たちにとって大切なのは、未来に向けてなすべきことを自分で考えることです。そのためにはまず、毎日忙しく過ごしている子供たちと先生に、未来を考えるために必要な時間を用意しなければなりません。こう考えた神野元基氏は教育ベンチャー企業を立ち上げ、AIを使って知識や技能を効率よく習得する学習ツールを作り出しました。
新しい技術を怖がったり、警戒したりするよりも、その技術を上手に生かして、子供たちに時間を作り、もっと大切なことを身に付けてもらおう。そんな若き起業家の声に、ぜひ耳を傾けてみてください。AIにはできなくて、人間の教師だからこそできることは何か、という課題も見えてくるはずです。


藤井孝良(記者)
#04 中原淳 アクティブな学びは組織が生み出す 学校と社会を「見える化」でつなぐ

再び学校現場に入った僕の役割は鏡になることだと思っています。教師が自身を振り返ったり、学校の未来を構想するときに必要となるような「自己を見つめる鏡」を提供していきます。そして、あくまでも学校を変えていくのは、当事者である教師自身です。

#12 平川理恵 コロナ危機で問われる学校の本質 ピンチをチャンスに変える思考

非常時だからこそ、限られたリソース(ヒト・モノ・カネ)の最適化がいつも以上に求められます。「形骸化したものはないか」「大事だと思い込んでいるだけではないか」と、既存のものをクリティカルに検討せざるを得ないタイミングなのです。

#13 新井紀子 読解力低下を「読み解く」 いま求めるべきは自学自習できる力

子供に自学自習できる力さえあれば、再び休校になったとしても、教科書と教材が手元にあれば、自力で学習に取り組んでいけます。これこそがいま、学校が一番意識しなければいけないことなのです。

【私のひとこと】

学校現場はいま、真っ暗な夜の大海原を漂っています。「これからどこに向かえばいいのか」。乗組員である私たち一人一人が当事者として考えなければなりません。14の教育論の語り手の中には、教育の専門家ではない人も、さまざまな仕事を渡り歩いて、教育の最前線にたどり着いた人もいます。そうしたこれまでの常識にとらわれない人の声に耳を傾けなければ、現場はこれからもずっと漂流を続けるでしょう。中には耳の痛い話もありますが、本気で教育を変えようとしている頼もしい味方なのです。本書が教育の未来を示す羅針盤となれば幸いです。


板井海奈(記者)
#10 宮口幸治 学校でしか救えない子どもたち 少年院から生まれたコグトレの可能性

世の中には、学校でしか救えない子どもたちがたくさんいます。私は児童精神科医としてさまざまな子どもと関わってきましたが、支援を必要としている子の中で、病院に来ることができるのはほんの一握りです。それ以外の子どもは支援が必要にもかかわらず、家庭でも学校でも気付かれず、苦しい思いを抱えています。

#14 葉一 YouTubeが変える学校 100万人の視聴者が求める未来の学び

学校の授業だけでは理解できなかったり、家庭の所得格差で塾に通えなかったりと、二本柱だけではカバーできない子供たちの学習ニーズを拾い上げるのが、三本目の柱である「授業動画」だと思うのです。

【私のひとこと】

この本では教師にとどまらず、AIを駆使する研究者、YouTuberなどさまざまな立場の人物が登場し、それぞれの地点から見た教育を語っています。14通りの教育観をたどると、学びの形は時代とともに進化しますが、教育者にとって大切なものは立場や時代に関わらず共通していると感じます。それは愛と情熱ではないでしょうか。14人の先進的な実践とともに、彼らの子供への深い愛と限りない情熱に触れてください。そしてこの社会には教育の可能性を信じ、歩みを止めない挑戦者が確かにいるという事実を知ってください。14人の思いとわれわれ編集部の思いが、読者の方の”未来の教育を信じる”一助になれば幸いです。


秦さわみ(記者)
#08 山口文洋 スタディサプリが変える教師像 教える人から学びの伴走者へ

多感な時期だからこそ、何でもかんでも授業で育むのではなく、好きなことに没入するための「余白」のようなものを取り戻す必要があります。

【私のひとこと】

得意な英語の授業はひたすら退屈。苦手な数学では先生の話がどんどん進み、自分だけが取り残されていく……。私の高校時代にはこんな、なんとも満たされない気持ちになることもありました。山口氏がEdTechを使って「個人の習熟度に合わせた知識のインプット」を提案する背景には、効率化の目的だけでなく「新たに生まれた時間を、夢中になれることに使ってほしい」という思いがあるようです。そうした“余白”が、自身の挑戦するマインドの原点になった、とも。子供のために何をEdTechに任せ、何を任せないか。スタディサプリの到来は、それを考えるきっかけになりそうです。


松井聡美(記者)
#02 ブレイディみかこ 「誰かの靴を履いてみる」こと 多様な社会を生きるための想像力

日本では経済だけがグローバル化されていて、教育も含めたそれ以外の部分は、むしろ時代に逆行しているのではないかと思えるほどです。

#03 日野田直彦 2050年を生きるための教育 「世界を救う勇者」を育成したい

大学の理系の実験ノートにおいて一番大事なのは失敗です。セオリー通りに実験していても、何の発見もありません。失敗の向こう側にこそ発明があるのです。

#05 遠藤直哉 進学校でも受験向け授業はしない 福島を教育で復興させる意志

生徒の「課題発見力」は、本当はすごいものがあります。でも、私たち大人が「こういうものだから」と教え込んでいるせいで、そうした力を奪っているのではないでしょうか。

#06 木村泰子 「教員の学校」を断捨離 全ての主語を子供に変える

日々、社会のニーズは変わります。そのニーズをいち早く察知し、フィットさせていくべきなのが義務教育です。社会のニーズに絶対に遅れてはいけないのが、実は義務教育なのです。

#07 鈴木大裕 「成功」「幸せ」の価値観を変える 米国の失敗から学ぶ教育改革への道筋

もし教育の先に、そして「学力向上」の先に、「幸せ」がないのであれば、そんなものはいらないと、私は自信をもって言います。

【私のひとこと】

私がインタビューさせていただいた方々は、学校の先生や教育研究者、コラムニスト……と、教育や子供への関わり方はさまざまです。それでも全ての方の根底には「子供たちのためにアクションを起こそう」という共通の熱い思いがありました。取材を通して、私自身も「現場で子供に関わる仕事にもチャレンジする」という新たな目標ができました。この本を読んでくださる皆さんにとっても、何かアクションを起こすきっかけになればうれしいです。


【目次】

#01 野依良治 人類は進歩し続けなければならない ノーベル賞受賞者が語る教育の究極の役割

#02 ブレイディみかこ 「誰かの靴を履いてみる」こと 多様な社会を生きるための想像力

#03 日野田直彦 2050年を生きるための教育 「世界を救う勇者」を育成したい

#04 中原淳 アクティブな学びは組織が生み出す 学校と社会を「見える化」でつなぐ

#05 遠藤直哉 進学校でも受験向け授業はしない 福島を教育で復興させる意志

#06 木村泰子 「教員の学校」を断捨離 全ての主語を子供に変える

#07 鈴木大裕 「成功」「幸せ」の価値観を変える 米国の失敗から学ぶ教育改革への道筋

#08 山口文洋 スタディサプリが変える教師像 教える人から学びの伴走者へ

#09 神野元基 進度2倍、 AI型教材キュビナの衝撃 問い直される授業と学び

#10 宮口幸治 学校でしか救えない子どもたち 少年院から生まれたコグトレの可能性

#11 髙橋一也、堀尾美央、正頭英和 Think Globally,Act Locally グローバル・ティーチャーが語る世界の最前線

#12 平川理恵 コロナ危機で問われる学校の本質 ピンチをチャンスに変える思考

#13 新井紀子 読解力低下を「読み解く」 いま求めるべきは自学自習できる力

#14 葉一 YouTubeが変える学校 100万人の視聴者が求める未来の学び