(円卓)「授業を使って学ぶ」学習者

東京大学名誉教授 市川伸一

コロナ禍という前代未聞の事態で、わが国の教育は大きなパニックに陥ってしまったように見える。そして、その対策としてGIGAスクール構想(1人1台端末とネット環境整備)の前倒しに期待が集まった。

しかし、今回のコロナ禍で浮かび上がったのは、ICT環境の遅れよりも、より根本的な課題ではないだろうか。

近年の日本の教育は、「授業の中で学ぶ」ということを大前提にしているように思う。一方には、「一斉講義型」で教師が授業の中で教えていく授業がある。

それに対しては、「教師が教えてくれないと学べない受け身的な学習者になってしまう」という批判が常になされてきた。

他方、それとは正反対に見える「問題解決型」とか「自力解決型」と言われる授業も、予習で教科書を読んできたりすると、「先に答えを知ってしまっては授業中の問題解決にならない」と抑制される。これもまた、教師に課題を出されてから考え始めるという点では、授業内での学びになっている。

学校教育で育てるべき大きな目標は、社会に出てからも自立的に学習を進められるような意欲と学び方を身に付けることのはずである。

発達段階に応じて、「授業の中で学ぶ」という学習者像から、「授業を使って学ぶ」という主体的・自立的な学習者像を目指してほしい。そこに、「学習の自己調整」ということの意味がある。

例えば、習得の学習では、「予習―授業―復習」というサイクルを想定し、予習で見通しを持ち、疑問を抱いて授業に出ることを促す。授業では、さらに深い学習活動を展開した上で、復習で理解の確認と定着を図る。これがうまくいっていないことが、コロナ禍において在宅学習を余儀なくされたときに露呈されてしまったように思う。

これからのウィズコロナの時代というのは、改めて家庭学習と対面授業のハイブリッドな教育を行うという、いわば当然の教育に立ち返る必要があろう。

日常的に、両方の学習を視野に入れて児童生徒に経験させておくことが、対面授業、オンライン授業、個別学習などの比率が状況によって変化しても対応できるたくましい学習者を育てることになるはずだ。