(鉄筆)教育のデジタル化……

本紙で度々報道されているように、10月、萩生田文科相、平井デジタル改革相、河野行政改革相の3閣僚会合で、教科書のデジタル化を進める考えが打ち出されて以降、デジタル教科書使用基準の見直し、オンライン教育の恒久化など、教育のデジタル化が急ピッチで進みつつある。

確かに、今日の高度情報化社会、様々な分野でのデジタル化によって、手軽で便利な社会への一層の進展が大いに期待されている。デジタル教科書もまた、それと同じ文脈の施策であろう。そのことが、子供たちの確かな学力形成に結び付くかどうかの確たるエビデンスはまだ不十分である。

日本の近代公教育が始まって以来150年近く、教育課程の中核を担う主たる教材としての紙の教科書がデジタルに変わることは、単に学びの仕方にとどまらず学びそのものにも大きな影響をもたらすことになろう。それは、教科書をはさんで、教師と児童生徒、児童生徒相互の「ことば」を介しての伝統的な授業の在り方、言い換えれば、教師と児童生徒との人としての関わり合いを通しての学校教育が大きく変わることを意味する。そのことが子供たちにとっていいかどうか。ことは、教育の根幹に関わる。

5年続けたデジタル教科書から撤退し、紙に戻したシドニーの小中学校があると聞いた。デジタルでは、深く読む力が養えないという米国の認知神経科学者メアリアン・ウルフ氏の知見もある。改めて、教育の研究者や学校現場などの声を幅広く聞き、将来に禍根を残さぬよう慎重にことを進めるよう切に願いたい。