(鉄筆)大統領就任演説で「民主主義」が……

「民主主義がかけがえのないものであることを、私たちは新たに学んだ。民主主義とはもろいものだ。そして皆さん、民主主義は今この時をもって勝利した」。バイデン新大統領の就任演説の一文だ。「民主主義」が11回出てくる。やはりアメリカは民主主義を理想に掲げる国だと実感する。「民主主義はもろい」とも言っている。

宇野重規氏はその著書『民主主義とは何か』で「現代は民主主義がさまざまな危機に直面している時代」とし、「ポピュリズムの台頭、独裁的指導者の増加、第4次産業革命と呼ばれる技術革新、コロナ危機」の4つを危機として挙げている。

独裁的指導者とされるトランプ政権の状況をマスコミで見聞してきた。アメリカの民主主義の歴史は、南北戦争当時の課題を引きずっていたり、分断を引き起こす火種がくすぶっているなど決して穏やかなものではなかったことが次々と紹介された。バイデン氏は「民主主義は今、この時をもって勝利した」というが、これからの道のりは平たんなものではないだろう。

翻って、わが国の新総理大臣の就任演説には「民主主義」という言葉は一度も出てこない。与党名は「自由民主」なのだが…。演説内容は官僚が書いたかと思うように総花的で事務的だった。感銘を受けるところはない。

終わりに「国民のために働く内閣」といったが、当たり前のことだろう。「新しい時代をつくり上げる」と締めくくったが、子供たちに夢を与える国の姿を示してもらいたい。新聞教育の一環で子供たちに彼我の指導者の就任演説を読み比べさせてみたらどうか。