対話の技法

納富信留 著
笠間書院
1400円+税

対話に関するノウハウ本ではなく、対話というコミュニケーションを哲学的な視点を交えながら15回に分けて問い直す一冊。

まず、お互いの立場を取り除いたありのままの人間同士で交わされるもの、相手に知ってもらいたいことや納得させたいことを前提としないもの、など詳細な解説を用いて対話を定義する。対話の目標について「特定の主題についてお互いに知恵を出し合って考えを進めていくことにあります」と結論や折衷案を出すことではないという主張には考えさせられる。

中盤では、「対話はけっして穏便な着地点を目指すものではありません」と対話という営みの厳しさを説明。中でも、「対話はある意味でぶつかり合いですので、それを避けるのは拒否、否定です」という一文は印象深い。対立を恐れずに納得いかないことには異議を唱えることが、対話を成立させる基本であり、そこで傷つくことも珍しくないと説く。

そして、子供、障害者、そして自分自身といった多様な対話相手との向き合い方を終盤以降に紹介。健常な大人ではない相手だからこそ学べることが多くあると語り、対話の自由度の高さや境界線の緩さに感心してしまう。

“自分探し”や“アイデンティティー”、“自分らしく”など、“自分”にまとわる葛藤にとらわれている人は年代問わずに非常に多い。対話の技法を身に付けることができれば、“自分”にとらわれることから解放されるだろう。