(円卓)原点に戻って考える

元全国連合小学校長会長 西村佐二

先日、5カ月後に迫った東京五輪の開催についてのテレビ番組を見た。ある識者は、これまで日本は、「それいけどんどん」式でやってきたが、これからは、景気も含め、沈滞、縮小傾向に転じつつあるとしてそれに見合った開催を主張し、また、ある識者は、こういう困難な時期だからこそ、改めて五輪開催の意義を含めて原点に立ち帰り、論義する必要があるのではないかという意見を述べているのを聞いた。

「うまくいかないときこそ原点に戻れ」とはよく言われることだが、これは東京五輪開催のみならず、コロナ禍の学校教育の在り方を考えるにあたっても示唆に富む提言と思える。

それにしても、今年度の学校は、コロナの影響をもろに受けて、困難の連続であった。

本来なら、昨年4月、新学習指導要領が滞りなく完全実施されたはずがそうならず、今後どうなるのかの見通しもはっきりしない。また、コロナの感染拡大はやや下火になったもののその完全な終息はいまだ見通せず、ウィズコロナ期の学校教育をどう乗り切り、ポストコロナ期の学校教育にどうかじを切るのか、そしてどこへ向かうのかを決めきれずにいるなど、学校は極めて厳しい状況に置かれている。

こうした困難な時期だからこそ、改めて、「学校のあるべき姿とは何か」という原点に立ち戻って学校を冷静に見つめ直し、論義を深めて、ウィズコロナ期における学校教育の在り方を策定すべきではなかろうか。

多くの学校が、この1年、3密の回避、マスクの着用、手洗いの励行といったコロナ感染予防を最優先に、ICTを積極的に活用した授業や少人数指導、集団活動の縮小や自粛、学校行事の精選と分散化など、試行錯誤しつつさまざまな工夫をしてきた。年度末を迎えた現在、今一度、コロナ禍1年の教育活動を振り返り、何ができ、できなかったか、新たに生み出せたことはあるかなどを、その本来の在り方、意義の原点に戻って見つめ直し、来年度の教育課程に生かすことが必要ではないか。

こうした徹底した点検・評価が、肥大化しつつある教育を見直し、子供たちにゆとりある学校生活を取り戻させ、コロナ禍の「新たな日常」を形成することにつながるのだと考える。

原点に立ち戻る勇気を強く期待したい。