(円卓)学習指導要領と授業の間を埋める

国立教育政策研究所名誉所員 工藤 文三

新学習指導要領で、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善が提起され、その後各教委では、新課程の実施に向けた資料を作成し各学校に提供してきた。その根拠は、答申と学習指導要領およびその解説の記述である。これだけの手掛かりでは、単元構成や日々の授業をどのように改めれば主体的・対話的で深い学びの実現が図られるのかは、明確でない。

「主体的・対話的で深い学び」の「主体的」「対話的」「深い」はいったん分けて考えてよいのか、「単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら」(総則)とするが、「見通しながら」とはどんな意味か、各教科等の「見方・考え方」と「働かせる」こととの関連は何か、など実際の指導計画や授業の構成をする際に判然としないことが多い。

観点別学習状況の「主体的に学習する態度」の評価も同様である。改善通知では「…粘り強い取組の中で、自らの学習を調整しようとしているかどうかを含めて評価する」としている。「含めて」の意味は何か。前提である「報告」では「性格や行動面の傾向を評価」するのではなく、「意思的な側面を評価することが重要」とし、「粘り強い取組を行おうとする側面」とその中で「自らの学習を調整しようとする側面」の二つの側面を評価することを求めている。

従前の「関心・意欲・態度」が、「性格や行動面の傾向」を評価しがちとの指摘はもっともである。それに対する「意思的な側面」の意味は理解しやすいのか。「粘り強い」の意味は漠然あり評価規準として用いることができるのか。「粘り強い」とは、〝根気よく忍耐力を持って諦めない〟の意味を持つに過ぎない。次の「自らの学習の調整」の「調整」の実際的な意味は理解が、これら「粘り強い」や「調整」の語がいわば〝規範性〟を持って繰り返されても、授業実践や評価活動の具体的イメージの喚起には十分ではない。

これらの問題は、新しい用語や概念を持ち込む際には、それが実現された姿を示すことが必要ということだ。この作業は告示以降に準備・提供する方法もあるが、本来は学習指導要領の記述内容を検討する段階で、十分な準備をすることが必要である。教育実践とのつながりが明確でないと改訂内容の検証・評価も曖昧なものになりかねない。

(浦和大学特任教授)