(円卓)わが国の安全保障

敬愛大学教育学部教授・教育学部長 向山行雄

 コロナ禍がおさまり始め、学校の教育活動も充実してきた。制限付きながら、運動会や宿泊行事も行われ、子供たちや保護者の喜びも伝わってくる。第6波が穏やかであることを切に願う。

 来年4月から高校の新学習指導要領が始まる。次の学習指導要領に向けての準備が始動する。仮に次期学習指導要領の全面実施が2030年なら、27年には告示、その前に中教審で基本的な方向性を示す必要がある。学校関係者、各学会、企業経営者や労働団体などが、それぞれにわが国と世界の状況を見つめ、子供たちがこれからの社会で幸せな人生を送れるよう知恵を絞らなければならない。

 私は小学校長時代に、小学校社会科の学習指導要領の検討に関わった。06年頃のことである。私は、日本の小学生が「自分たちの国(領海を含む)はこの範囲である」と地図帳で示せるようにすべきだと考えていた。そのためには尖閣諸島や竹島を学校教育で扱う必要がある。さまざまな検討の結果、小学校では明記せず、中学校社会科学習指導要領解説で触れることになった。この決定について中国政府は猛烈に抗議し在日大使を引き上げた。その後、現行の学習指導要領では領土・領海の記述や自衛隊についても記述されるようになった。

 さて、次期学習指導要領である。中国は、尖閣諸島や台湾への領土的野心のある動きを見せている。北朝鮮の示威的行動も激化している。近隣諸国の情勢を踏まえ、国民が正しく安全保障についての知識や判断力を持つ必要がある。防衛省は21年、「はじめての防衛白書」という小学生向けの冊子を作成。陸海空の安全に加え、サイバー、電磁波、宇宙などについても記述されている。

 次期学習指導要領では、国際環境の変化に対応し安全保障について適正に扱うことが肝要だ。私たちの孫の世代は、今後長きにわたり隣国との緊張関係の中で生きていかねばならない。正しい知識を持たぬ人は、とかく表層的な事象の見聞だけで興奮しがちになり、偏狭的なナショナリズムに陥る危険性がある。判断の根拠が乏しいから、いきおい感情の起伏に任せるようになる。近隣諸国との関係や国際社会でのわが国の在り方を考えるためにも、安全保障の内容を学校関係者が真摯(しんし)に検討する時期に来ている。

 (全国連合小学校長会顧問)

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