ユネスコ加盟70年で特別座談会 各地のESDの実践にエール 第13回ユネスコスクール全国大会

 持続可能な社会の創り手を育む教育(ESD)の推進に向けて、第13回ユネスコスクール全国大会・ESD研究大会(文科省、日本ユネスコ国内委員会主催)が11月27日、オンラインで開催された。日本のユネスコ加盟70周年を記念した特別座談会が行われ、気候変動問題などの世界的な課題に対して主体的に行動していく子どもたちを育てるために、今こそESDやユネスコスクールの真価が問われていると、登壇者から期待を込めたエールが送られた。

 前回大会に引き続き、新型コロナウイルスの感染防止対策の観点からオンラインで開かれた第13回大会は、約300人がYouTubeから各プログラムを視聴。

 開会式にビデオメッセージを寄せた末松信介文科相は「今、人類は、新型コロナウイルス感染症との戦いに加え、気候変動、生物の多様性や天然資源枯渇など地球規模の課題に直面している。これらは地球上の誰もが避けて通ることのできない、人類一人一人が抱えている課題だ。『自分たちが社会の課題にコミットしなければ、自分たちの未来が脅かされる』という危機感は、先だって行われたCOP26においても各国のリーダーから表明された。世界的な課題を『自分事』として捉え『持続可能な社会の創り手』の育成を行うESDは、世界の標準となっていく教育と言える」と、ESDの意義を強調した。

 このほか、開会式では、濵口道成・日本ユネスコ国内委員会会長、村松隆・宮城教育大学学長(宮城会場の代表)があいさつを行った。また、日本ユネスコ国内委員会広報大使のさかなクンから特別メッセージが送られた。

大震災から10年―被災地の教員ら防災教育に言及

 午前中のプログラムは、宮城教育大学とつないでのパネルディスカッション。「大震災から明日を拓く教育の在り方を探る―ビフォー311・アフター311から学ぶ」をテーマに、東日本大震災の発生から10年を迎えたことを受け、ユネスコスクールにもなっている宮城県気仙沼市の公立小学校の教員らが登壇し、地域と連携した避難訓練や教科の中で取り組む防災教育の実践の成果、次世代への記憶の継承に向けた課題などを報告。ESDと連携させた防災教育の未来像を話し合った。

リモートで宮城教育大学とつないで行われたパネルディスカッション

 パネルディスカッションを始めるにあたって、基調講演を行った市瀬智紀・宮城教育大学教授は、東日本大震災発生当時から現在までの動きとして、ドイツをはじめとする世界各国のユネスコスクールから被災地にメッセージが届いたことや、震災後に世界各地に防災教育を発信する取り組みが広まったことを指摘。気仙沼市立階上(はしかみ)中学校では、震災の記憶を継承するために、生徒が地域住民から当時の話を聞いたり、震災遺構でのボランティア活動を行ったりしている取り組みなどを紹介した。

 パネルディスカッションでは、気仙沼市立気仙沼小学校で防災主任をしている畠山三弘教諭が、宮城教育大学の教職大学院で研究している防災教育の課題について報告。「子どもたちの心を揺さぶり、地域を支えようという意識を育てることが大切だ。いつ大規模な災害が来るか分からない中で、最も大切な備えは、地域を支える人づくりだと考えている」と、震災の記憶の継承や、地域で防災に取り組む人材育成に向けた視点を解説した。

 また、東日本大震災を宮城県南三陸町立名足小学校で経験した気仙沼市立大谷小学校の榧木(かやき)千枝教諭は、想定外の津波が来たことで児童らと共に高台へと避難したエピソードを語った。その上で榧木教諭は、震災後に教員らで制作した「防災学習シート」の取り組みや、幼稚園・中学校・公民館が連携して行う合同避難訓練について紹介。合同避難訓練では「10分以内に避難することを目指して訓練しているが、実際の津波からの避難では、避難した後にかなり長い時間をその場で過ごさなければいけない。今後の課題として、中学生と小学生、幼稚園が普段から交流し、顔見知りの関係をつくっておくことも大事だと思っている」と指摘した。

 震災当時は名足小学校の6年生で、現在は榧木教諭と同じ大谷小学校で勤務している三浦美咲教諭は、宮城教育大学での防災教育の学びを生かした4年生の社会科の授業実践を発表。その実践では、GIGAスクール端末を家庭に持ち帰り、防災バッグの中にどんなものが入っているかを撮影してきて授業で共有したり、学校にある市の防災倉庫に入り、どんな防災用品がどれくらい備蓄されているかを確認したりして、子どもたちが防災を自分事として捉えた後、同校の校長になったと想定し、「災害が発生し300人が避難している中に、200人分の弁当が届いたら、すぐに配るべきか」といった問題を子どもたちでディスカッションするという。

 三浦教諭は「震災当時の経験や大学での活動などから、備えの重要性を感じている。すぐそばに備えはあるのに、子どもたちは知らないのが現状だ。まずは学校で災害への備えが身近にあることを学ばせ、日頃から災害への備えに触れさせて、社会の一員としての自覚を育てることが、未来への備えにつながっていく」と話した。

 また、ユネスコスクールで防災教育に取り組んでいる3人の高校生である、宮城県気仙沼高校1年の小松美咲さんと末永詩真さん、宮城県気仙沼向洋高校1年の阿部蓮さんがビデオで登場し、どのような活動に取り組んでいるかを発表した。

 東京の会場から教員らの話に耳を傾けていた前宮城教育大学学長の見上一幸・尚絅(しょうけい)学院大学特任教授がパネルのまとめとして、「先生方がされている防災教育は決して無力ではない。(震災直後に)『附属小では防災教育をしていたが、その成果はどうか』と聞かれ、『震災があまりにも大きく、震災の前には教育も無力だ』と返事をした。ところが、その後で、防災教育でやったことの一つ一つが子どもたちの行動に表れていたと附属小の先生から聞いた。どんな小さなことでも、防災教育は子どもたちに生きる」と強調し、ESDやユネスコスクールと連携した防災教育の効果に期待を寄せた。

ユネスコ加盟70年で特別座談会―各地のESDの実践にエール

 午後はまず、日本のユネスコ加盟70周年を記念して「わが国におけるユネスコの功績、SDGs達成に向けての役割」と題する特別座談会が行われた。ユネスコスクールの実践とESDの可能性について、関係者が意見交換した。

日本のユネスコ加盟70周年を記念して行われた特別座談会

 前日本ユネスコ国内委員会会長である安西祐一郎・慶應義塾大学名誉教授は、平和の実現を求めた戦後の日本社会がユネスコの理念に共鳴し、さまざまな活動が展開されてきた歴史的経緯を振り返り、「ユネスコの活動が戦後間もなく、熱気にあふれて始まった当時をわれわれは共有しないといけない」と呼び掛けた。

 その上で「子どもたちには、これからも平和な時代に暮らしてもらいたい。子どもたちが元気に、日本の津々浦々、そして世界で活躍してほしい。そのためのリベラルアーツの素地として、ユネスコスクールはあるのではないか」と期待を寄せた。

 日本ユネスコ国内委員会広報大使の末吉里花・エシカル協会代表理事は、ユネスコスクールに加盟している東京都大田区立大森第六中学校の授業を視察したときに印象的だったこととして、あらゆる教科で気候変動や持続可能な暮らしといった、世界の課題と関連付ける実践が行われていたことを紹介。「こうしたESDの学びが教室を飛び越えて、家庭や地域に及んでいくのだろう。子どもが地域に発信することで地域が変わり、温かな循環が生まれるという希望を感じた」と高く評価した。

 一方で末吉氏は、気候変動について、日本の大人たちの問題意識は低いと指摘。「課題の解決のために真剣に頑張っている若者が、自信を持って活動に邁進(まいしん)していけるような環境を整えてあげる必要がある。本気になっている大人が身近にいると子どもたちに実感してもらえるように、ロールモデルとしての教師の役割は大きい」と強調した。

 市内の全ての公立小中学校がユネスコスクールに加盟している福岡県大牟田市教育委員会の安田昌則・前教育長は、ユネスコスクールを核としたまちづくりについて説明。「学校では、ESDによって教育活動が充実し、自分の考えで行動する子どもが増えた。地域では多様な団体が重層的に連携している。特に最近は、ESDを経験した中学生が、これを次世代に継承したいと、本市の教員として着任したのはうれしかった」と、長年の取り組みの成果を報告した。

 大会ではこの他に、「ESD推進による令和の日本型学校教育の構築」「『学び』の先に見える“可視化未来”と自己」「学校の実践、取り組みを評価し、成果を広める」「ユースの活動と国際交流―Voice of Youth Empowermentの事例から」の4つの分科会が設けられ、ESDの実践をもとにした研究協議が行われた。

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