(鉄筆)「不作為バイアス」に関する研究……

 知っているのに知らないふりをすることは生活の中で珍しくない。波風を立たせずに人とうまく接していくために欠かせないスキルとも言われる。波風を立たせないのは相手ではなく「自分のためである」ことに気付いていないこともある。

 昨年12月20日付本紙に、神戸大学大学院の林創教授らの「不作為バイアス」に関する研究の記事が載っていた。大人も子供もあえて何も言わない「不作為の嘘」は、偽の情報を伝える「作為の嘘」よりも道徳的に甘く判断したという。

 大人の場合は他者をかばう嘘より利己的な嘘の方が、また、偶発的悪事を隠す嘘よりも意図的悪事を隠す嘘の方が、それぞれ不作為バイアスが大きかったそうだ。

 いじめ問題の研究の権威、森田洋司氏は『いじめとは何か』(中央公論新社)において「いじめは人間が社会的に作り出す関係性に潜む病理である」とし、「いじめ」を「いじめた子」「いじめられた子」とともに周りの子を「観衆(おもしろがって見ている子)」「傍観者(見て見ぬふりをしている子)」に分類。傍観者が冷やかな反応を示せば、いじめを抑止する存在となるが、傍観者的な態度はいじめをする子供を支持する存在となると記している。

 学校はいじめの問題に真摯に取り組んでいる。いじめを生み出さない集団をつくること、いじめが発生しても早期に発見し対応して最小限に食い止めることが求められる。子供たちにいじめを見ぬふりをしない、知らないふりをしない力を育て、信頼できる大人に知らせるなどの具体的な対応の術を身に付けさせることが大切である。

あなたへのお薦め

 
特集