(円卓)「個別最適な学び」と聞いて

総合初等教育研究所参与 北 俊夫

 学校現場で「個別最適な学び」の用語が飛び交っている。「個に応じた指導」を学習者の視点から整理した概念だという。まったく新しいことを求めているのではないようだ。

 一斉授業の場でも、学習は個別に成立している。この原則を踏まえると、子供が自らの問題意識や興味・関心に応じて、自らの学習活動を構成することは重要な意味を持つ。

 教師には子供の学習状況を見取り、一人一人に応じた適切な指導が求められる。全ての子供たちが最適な学習環境の中で学びを深めるようにすることは教師の重要な役割だ。

 「個別最適な学び」と聞いて思い出したことがある。1980年頃、学校建築にオープンスペースが設けられたことなどをきっかけに、従来の一斉画一的な授業を克服しようと個別化教育、個性化教育が実践された。

 筆者は、かつて社会科授業で子供が自らの問題意識や興味・関心に基づいて、多種多様な学習資料の中から必要な資料を選択して調べる活動を取り入れたことがある。子供による資料選択が子供の学習意欲と学習成果にどう影響するかを明らかにすることが研究の狙いだった。

 学習の個別化、個性化を重視することで、子供の学習意欲が高まった。一方で、学習成果の習得状況が拡大し、違いと差が顕在化した。学習が孤独になり、孤立しがちな子供が出てきた。

 そこで重視したのが学校ならではの学びのスタイルである、学び合う活動だ。友達から学ぶことで自らの学習に自信を持って取り組むことができる。個別的な学びと協働的な学びを相互に関連付けることで、相乗効果が発揮され、学びを深めることができた。

 本実践・研究は、本紙(1981年10月29日付)で「『一斉・個別・一斉』の形態によるサンドイッチ形式」として紹介された。

 今では1人1台の端末が整備されている。子供は提示された教材や資料を自らのペースで活用することができる。端末は個別学習に最適な教具だ。新しい教育用語が登場すると、つい飛び付きたくなる。新しいことをやらなくてはならないのかと不安感を抱くこともある。

 「個別最適な学び」に取り組むとき、なぜ求められているのか。何のために行うのかを確認し、過去の実践にも学びながら多様な指導方法を工夫したい。

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