(円卓)高校の観点別評価への逆風

教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸

 新年度(2022年度)より、高校では観点別評価を指導要録に記入する。以前は、評定のみ記入すればよかったため、観点別評価を踏まえて評定を導くこととなってはいたが、観点別評価を踏まえて評定を決めていたのはごく一部の学校にすぎなかった。今後は、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で評価する。

 高校の指導要録への観点別評価記入について、中教審教育課程部会のワーキンググループで、筆者は委員として記入の方針に賛成した。大学入学共通テストに、限定的ではあるが記述式の導入が決まっていたからである。

 多肢選択式の問題を用いるセンター試験が続く限り、高校での観点別評価は絵に描いた餅になるだけと考えていたが、記述式の導入とセットであれば、そのような心配は少なくなると考えたからである。

 しかし実施寸前になって記述式は延期され、復活する見込みは当分ない。

 このため高校の観点別評価に、大学入試からの逆風が吹いているといわざるを得ない。とはいえ、現在のわが国は、GDPで中国に抜かれて久しく、18年には一人当たりの購買力平価GDPで韓国に抜かれてしまった。かつては半導体王国であったが、今では台湾の企業を誘致せざるを得ないほど半導体不足にあえいでいる。

 このような低落の原因はいろいろであろうが、多肢選択式を用いた大学入試の在り方も一つの原因となったと考えている。

 技術革新が急速に進む社会では、思考力や判断力の育成が重要であると言われ続けてきた。私も高校の教員であったので痛切に感じていたが、センター試験の多肢選択式問題に対応しようとすれば、思考力や判断力の育成を目指した授業などとてもできないということである。

 思考力や判断力を目指した授業を実施すると「もっとセンター試験の問題に合わせた授業をしてほしい」という要望が生徒から出されるのである。多くの高校教員はこのような暗黙のプレッシャーを感じているはずである。

 しかし、大学入試からの逆風が吹いているとはいえ、もはやわが国の現状は、入試改革を待って、思考力や判断力の育成に力を入れるというような悠長な状況ではない。

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