元玉川大学客員教授 小澤 良一
21世紀の今となって、過去のものと考えていた戦争の映像が毎日のように報道されている。そこでは、「ベルリンの壁崩壊」以前によく聞いた「西側」や「〇〇軍事同盟」などの言葉が飛び交うこととなった。
教育者として職を重ねてきた私にとっては、どちらかといえば政治や軍事に強い関心を持つことはなかった。特に軍事については、全く学んだことも関心すらもなかった。
しかし、連日の報道で政治と軍事が表裏の関係にあり、両者のバランスが微妙であることや地政学的なわが国の状況についても認識を新たにした。
戦争は悲惨なものであり、命や人生に関わることについて学ぶ多くの実践がこれまでもある。これらの継承とともに、現在や近未来を展望したわが国や他国の歴史や経済、政治状況などを多角的に学ぶ活動、それらの活動の中でわが国が関係する戦争が起きる可能性があるのか、その戦争を避けるための選択肢は何か、もし万が一避けることができない場合はどんな選択肢があるのか、現実世界を冷厳に見つめ憲法のもとにそれらにどう対処することが可能なのか、新たな教育課題として提起されている。
この課題に対処するためには、第一に、児童生徒、学生にとどまらず多様な人々の研究や学びを保障できること。第二に、より正確に事実を反映した情報の収集やその活用を図ること。第三には、事象に対するさまざまな見方や考え方を自由に表現し交流できる研究や学習が担保できることなどが欠かせないだろう。
これらは、学校教育では、現行のカリキュラムや「主体的・対話的で深い学び」による活動をより深化させることにより実現可能性はある。
しかし、研究者や指導者、情報の質の向上、より広範な研究や学びの場が必要であり、学校教育の枠を越えた財源確保が必須となることから、昨年12月末から始まった「教育未来創造会議」での協議内容も注視したい。
戦争のない平和な世界、日本であってほしい。しかし、歴史、現在の状況を考えればそのような期待は、難しいものであることも理解できる。困難であるが教育の力で未来では平和を実現できないか。
今だからこそ取り組むべきテーマであると考えている。