(円卓)教え込みでない学びの姿をつくれ

日本持続発展教育推進フォーラム理事 手島利夫

 全国各地を研究会や講演会などで回る中で、「小学生時代からいままでに主体的・対話的な学びを経験したことのある方、いらっしゃいますか」と声を掛けることがある。しかし、手を上げる方は一割にも満たない。

 日本人の大人は「教え込み教育」の中で知識や技能を身に付け、その結果、他人よりも優れた成績や進路を得る喜びや悲しみの中で育ってきたようである。

 このような現状を越え、持続可能な社会の創り手を育むために、学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善を求めている。

 日本中のほぼ全教員に向かって「あなたが今まで経験したことのない主体的な学びを創りなさい」と無理難題を言っているのである。

 激変を続ける世界では同じ「正解」がいつまでも通用するわけがない。時代の変化の中で教育観も指導方法も、また教員自身も変わらざるを得ないのである。

 子供たちを、「望む未来の姿」と「目の前の現実」とのギャップに出合わせ、そこで芽生えた問題意識を学習問題にまとめ、その解決に向かって共に学び進める姿をつくることこそが「主体的・対話的な学び」に続く道なのである。

 そして、学び、気付いたことが自分たちの考えや行動をも変容させるならば、それこそが「深い学び」の姿なのである。

 とはいうものの、多くの保護者や政治家は、旧来の学力観から抜け出せないまま、教育を語り続けている。教育産業も成果主義をあおり立てている。

 「ICTを活用した学習の個別最適化」など、答えの決まっている問題への対応力の向上が重要だと語る学者までいる。

 このような現状を踏まえた上で、それでもわが国の教育を変え得る力は、どこにあるのだろう。それは子供たちが目の色を変えて、自分たちの気付いた問題に立ち向かい、調べ、考え、判断し、表現し実行する姿を社会で共有することにある。

 また、そのような学びづくりに向けて、変容を続ける教師の営みを方向付ける指導者層の覚悟も求められている。

 日本の教育の潮目を変えるためにも、子供たちと先生方の学ぶ心に火をともし続けよう。

 (元東京都公立小学校校長) 

あなたへのお薦め

 
特集