ネット活用で意欲を高めるために 授業素材を敏感に察知して

2014年1月1日号掲載

  ICTを活用しリアルタイムで世界とつながることで、英語教育はもっと楽しく意欲も高まる――。東京都荒川区立諏訪台中学校の山崎聡教諭は、ICTを活用して英語教育を推進し、生徒の意欲を引き出すことに成功しているエグゼクティブティーチャーの1人だ。「教師としてのアンテナ」を張っておくことが、授業実践の質を高めるポイントであると強調する。

リアルタイムで世界とつながる

 荒川区は昨年9月、区内の全公立小・中学校に児童生徒1人1台のタブレットPCを整備した。同校は同区の「タブレットPC活用モデル校」に平成25年度から指定された。これによりICT環境が全国でもトップレベルになり、山崎教諭は「教科書に出てくる事柄などを生徒たちがインターネットで調べると、リアルタイムで世界とつながることができる」など自らが思い描く授業が行いやすくなり、子どもたちの学びの広がりにもつながっていったという。

 同校を取材で訪問したのは、昨年12月11日。同教諭はこの日の3年生の授業で、前日にストックホルムで開かれた「ノーベル平和賞の授賞式」で史上最年少の受賞となったパキスタン人のマララ・ユスフザイさん(17)のスピーチの一部を取り上げた。ひとりの少年の生き方を通し、社会貢献について関心を高めることをねらいとする「We Can Change Our World」=「私達が自分たちの世界を変えることができる」(「NEW CROUWN―Book3」(三省堂)の単元Lesson7)を学んだ直後だったためか、本当の音声を含めた映像を、インターネットを通じて生徒に示すと、生徒たちは食い入るようにそのスピーチの内容を読んでいた。あまりにも真剣な様子だったため、時間を延長して扱ったほどだ。

 また、昨年大ヒットした映画「アナと雪の女王」の劇中歌「雪だるま作ろう」も授業で取り上げた。子どもたちに人気があり、かつ歌詞が中学校3年生までに習う文法事項でカバーできるからであるが、子どもたちはこの授業に意欲的に取り組んだという。

最新の情報を目の前に提示

 インターネットに常につながる環境なので、このような素材を容易に取り入れることができるようになった。最新の情報をリアルタイムで授業の素材として生徒たちの目の前に提示できる、というICT活用の特性は、意欲の向上に大きく役立ち、授業の質の向上につながっている。

 また、ICTの有用性の一つとして、パソコンでワープロソフトやパワーポイントなどを使うことで単語力や読み書きの力の伸長に大きく貢献できる、と強調する。生徒たちは、分からない単語は自ら積極的に調べていくし、英作文のスペルミスなどもその場でチェックされるので、レベルの高い英作文ができるようになってくる。「3年生ぐらいになると、英文で自分の意見を書けるようになってきた。思わず教師も感心してしまうほどである」と述べる。

進んで知りたいものをキャッチ

 このようにICT活用の有用性を高めるためには、生徒が進んで知りたいと思えるようなトピックをつかむことができるかどうか、という点がポイントとなる。そのために職員室での何気ない会話や、英語教育の勉強会などでの情報交換を大切にしているという。

 今回、マララさんを取り上げたのも、以前に導入した教員の話を研究会で聞いていたからで、いつかチャンスがあれば自分の授業でも取り上げたいと思っていたからだ。日頃から「これを生徒に伝えたい」「これは授業につかえる」などと「教師としてのアンテナ」を高く張り、情報を敏感に察知することが授業の質向上につながっている。また、日本の中学生と世界の同じ年齢の子どもたちとがつながっていくことを、常にイメージして授業を組み立てることが大切、ともいう。

 同校の清水隆彦校長は、「ICTを上手に使いこなし教育の質を上げていく努力をすることが将来活躍できる大人を育成することにつながる。21世紀型スキルを高めるためICTを活用する力は必要である一方、新聞も含めていろいろな文章を読み込んでいける力も大事。ICT機器を扱うにあたって、ベテラン教師が新人に教えを請う場面もあったが、いい姿だと思う」と、ICTで教師力を向上させることの重要性を語ってくれた。

(詳細は「教育新聞」紙面に掲載)