ICT機器使いあいさつできた 特支児童生徒の学習意欲高める

2015年2月12日号掲載

 特別支援教育においてICT機器は有効であり、使いこなせる教師の育成が求められる――。埼玉大学教育学部附属特別支援学校の長江清和副校長と村瀬太一朗教諭は、さきごろ、同学で行われたフォーラム「教育支援におけるICT活用について」において、「特別支援教育におけるICT活用と教員養成の取り組み」を報告した。

 まず、長江副校長は、生徒のICT機器の有効性について話をした。

 同副校長は、毎朝、校門で生徒たちを迎えてあいさつをかけているのだが、これまでどうしてもあいさつを返してくれない女子生徒がいた。

 その子が、最近、iPhoneのアプリを使って初めて「おはよう」と返事をしてくれたとし、「彼女は毎日、あいさつをしたいと思いつつ自分の口からは言えなかったのだと思う。それが、コミュニケーションツールを使うことであいさつの言葉を表現できた。私は、本当にうれしかった」とし、ICT機器の有効性を強調した。

 そのうえで、長江副校長は同校に在籍する子どもたちは知的障害、情緒障害をもっている子が多く、視覚情報や聴覚情報は理解するが、言葉だけの指示は苦手で、気持ちを持続させたり、類推したり応用したりすることも苦手だとした。そこで大切な情報を可視化したり、音や映像とともに提示できるICT機器は子どもたちにあっており、子どもたちは上手に駆使しているとした。

 同校では今年度、全教員、全児童生徒に1人1台のタブレット端末を配布している。また教室のテレビ画面にはケーブルが常時接続されているので、デジカメやiPadを使いたいときには、すぐに使える状態となっている。

 そして、「一人のスーパー先生より、全員の一歩前進を!」を合言葉に、全教員がICT機器を使いこなせるよう校内研修を積み重ねた。

 実際の授業における指導実践について紹介した村瀬教諭は、「たとえばことばが音声で表現できるアプリを使うことで、それまでは文字でしか自分を表現できなかった子どもが、あいさつをはじめ自分の言いたいことを音声表現できるようになった。音声で伝えることで、相手からの反応もすぐに伝わり、学習意欲も高まった」と効果を指摘した。

 また、同校が教員養成機関であることから、今後、教員になる実習生にも使いこなせるようになってほしいと、教育実習でもICT機器を導入したという。

 まずはICTガイダンスを前年度からコマ数を増やして行い、iPadの使い方を実習させた。そして、実習期間中は指導教員が率先してICT機器を使うようにし、背中を見て学ぶ方式をとった。

 成果として実習生たちからは、「1人1台のiPadを持たせてもらえたので身近で使いやすかった」とし、「見せたい、教えたいポイントを実演してすぐに大きな画面に映し出せたので、子どもが自分の振り返りを実感できる」「説明するときに動画を使うことで、準備や説明の時間を節約できる」「教材づくりにiPadのカメラ機能が役立った」という声が聞かれたという。

 加えて「使い方を知っているかどうかで差が大きい」「不具合が出たときのリスクとその代替案を考えておく必要がある。また、そうならないように事前に操作、手順を確認しておく必要がある」といった声も出され、「ICT機器の利用は特別支援教育には必須。もっと使い方を知りたい」との感想も出された。

 村瀬教諭は、「実習生たちも実際に使ってみることでその有効性を実感したようだった」とし、「25年度では分からないから使えないと言っていた実習生が多かったが、26年度には物理的な環境が整ったこと、教員側がモデルとなる実践を多く示せるようになったこともあり、実際に使ってみる実習生が増えたと同時に教材をつくるなど成果も出せるようになった」と評価した。

 そして、今後とも全ての教員のスキルアップを目指してICT機器を使った授業に取り組んでいきたいと抱負を語った。

(詳細は「教育新聞」紙面に掲載)