提言 アクティブ・ラーニングに向けたICT活用の視点と実践

2015年10月5日号掲載

関西大学総合情報学部教授 黒上晴夫


自律的に学ばせるための問いを 目的見据え学習プロセスを設計

 各所ですでに指摘されているが、「アクティブ・ラーニング」が指す「教え方=授業形態」は多様である。オニールらの整理によれば、理解状態をふり返る時間をつくったり、考えを書かせるような単純なものから、探究学習や体験学習のような複雑なものまでさまざまな形態がある。

 講義中心の大学の授業に対して、少しでも学習者が能動的に取り組めるようにすることから始まったとすれば、単純なものでもアクティブ・ラーニングと呼んでよいのだろうが、高校や中学校では(1)自律的に学習を進める(2)協同的に学習を進める――という2つの軸が欠かせないと考える。そこで重要な活動として以下の5つをあげる。

1.考えをもたせる

 まず、子ども一人ひとりが自分の考えをもつことが出発点だ。その上で、紙ベースの資料ではできないことが拡大投影である。関心に応じて部分を拡大し、そこから見えることを元に考えをもつような学習が可能になる。一人ひとりが異なる情報源にあたることが大事な場合もある。そのため、個別に検索ツールを使って調べ学習を行えるとよい。さらに考えを広げるときにはイメージマップを描くことがある。そのためのアプリもある。

 このようなシンキングツールを用いることで、自身の考えをはっきりさせることができる。紙に書くときと違い、ICTでは考えを自由に動かせるのが利点である。考えを書き出し動かすような学習では、一人ひとりが自律的に取り組む学習を保証できる。

2.考えを整理分析する

 情報を集めた後は、それらを整理分析することが不可欠である。プレゼンテーションソフトでスライドを作るときは、1枚のカードに収まる情報が切り分けられて掲載される。それらを一覧しながら自律的な判断で取捨選択し、分類や階層化を図ることで考えを整理する。そして、必要なものの順序を決める。

 集めたデータを表計算ソフトに入れて集計したり並べ替えたりすることもできる。グラフをつくることで変化や関係を捉えたりすることができる。データベースを使えば、よりシステマティックに情報を選び出したり並べ替えたりすることもできる。

3.考えを言い表す

 考えを発表することは、子どもにとってハードルが高い。しかし、何かを写し、それについて説明する活動はそのハードルを下げる。低学年の段階から、写真を撮りそれを説明するような「デジカメスピーチ」に慣れつつ、学年進行に応じて、実物投影機やタブレットPCで資料やノートを写しながら考えを述べるような活動につなげていく。そんな活動を通して、大事な所を矢印で指したり、部分的に大きく映すようなことも自然に身に付ける。

 プレゼンテーションソフトを用いた発表では、伝えるためにどんな画面を見せて何を話すかを計画する。発表のシナリオを準備し、参照しながらスピーチしたり、示した項目や図や絵を示したりしながらより自由に話すことも身に付けさせたい。

4.他者の考えとすり合わせる

 個人の考えがグループやクラスで共有されると、自分の考えとは違う考えと出会うことになる。ICTを用いることで個人の考えやデータを他者とやりとりすることが容易になる。グループメンバーが各自のタブレットで集めた情報を互いにやりとりして共有する。そのように広げた情報を分類したり組み合わせたりしながら、協同的に考える。

5.記録をとってふり返る

 学習の締めくくりでは、これまでの学習をふり返って、自身の考えを再整理することが重要である。そのためには、いわゆるポートフォリオとして学習の流れを継続的に写真やデータで記録し、それらを一覧して、学習事項の整理や枠組みの作り直しをしたり、知識を位置づけし直す活動が必要になる。ICTを使って学習プロセスを逐一記録しておくと、やりやすくなる。

 ICTを使うには、自律的な操作が必要だ。そのためカギとなる自律的な学習につながる。しかし、それには、よく計画された課題や問いが重要になる。また、学習プロセスの中でうまく他者と意見を交流し高めることも重要である。目的を見据えつつ、どのような学習プロセスを経て、どんな考えをもたせるかを考えることが何より重要だ。



黒上晴夫(くろかみ・はるお)学校教育における子どもたちが自由に学べる学習空間の創造を追究。著書に『シンキングツール~考えることを教えたい』(NPO法人学習創造フォーラム)などがある。

(詳細は「教育新聞」紙面に掲載)