提言 ネオデジタルネイティブ世代に向けた生徒指導

2015年10月5日号掲載

玉川大学大学院教育学研究科准教授 近藤昭一


対峙できる確かな人間関係を ネット時代の生徒指導の在り方

 未就学児童のスマホなどの利用実態が、6歳児43・9%、5歳児41・5%、4歳児41・4%、3歳児35・4%、2歳児31・4%、1歳児16・6%、0歳児10・5%に上ることが国の調査(※1)で明らかになった。もちろん、これらは保護者から使わせてもらう場合を含んでいるが、彼らの32%が操作方法を勝手に身につけていることも分かった。まさに生まれながらのIT世代、デジタル世代といえ、学校教育のアプローチも足場を整え直す必要がありそうだ。

■子どもたちのネット利用の実態

 スマホなどの所有率は小学生36・6%、中学生51・9%、高校生97・2%に上り(※2)、増加の一途にある。学校はこうした彼らのネット利用の実態を踏まえ、彼らがそこに何を求めているのかを理解しておく必要がある。ここでは高校生の利用実態をもとに解説する。

 スマホなどの1日平均利用時間は、男子高校生が4・1時間、女子が7時間で、女子の1割は15時間以上と長時間に及ぶ実態がある(※3)。

 また、利用内容については、圧倒的にソーシャルメディア(ブログやSNSなど)が高く、次いで動画投稿サイト、オンラインゲームとなっている(※4)。使用頻度の高いアプリとしては、LINE(男91・3%、女92・3%)、Twitter(男58・3%、女77・7%)、YouTube(男58・3%、女70・3%)などとなっており(※5)、ブログやSNSなどによる交流を求める傾向が顕著である。ニコニコ動画やミックスチャンネルなどの動画投稿サイトやオンラインゲームでも、チャットやコメントなどによる交流がさかんに行われている。

■ネット上の「交流」から見えるもの

 ソーシャルメディアの中で、多くの子どもたちが自分の写真や動画を堂々と公開し、趣味のダンスや音楽、ファッションやアニメ、私生活などについて楽しく発信している。一方、悪ふざけの写真や犯罪性のある動画、アイドル風を装った写真や親子げんかの動画、裸やキスシーンまで公開しているものも多く見られる。これらのサイトには悪口雑言を含む不特定多数からの書き込みやチャットが寄せられ、時に〝おまつり〟〝炎上〟となる。

 また、友達や異性とのつながりを確認、誇示するような写真や動画が多く見られる。そこでは仲良さげに交流する姿が掲載され〝仲良し〟が強調されている。

 こうした発信に共通する心理として、「見てもらうための自分」「うけねらい」「主人公感覚」「人間関係の確認」「自己確認」「自己顕示」などが透けて見えてくる。ネットの匿名性や間接性の影で、内心に孤立感を抱えたまま虚勢を張るような自信なげな姿や自己中心性は、自立に近づけないでいる彼らの発達課題を映し出している様に見える。

 自信のなさ故に、長時間にわたりネット交流に浸る彼らは、そこを精神的な〝居場所〟とするようになる。ここにネット依存症への道筋が隠れている。国の調査では(※4)、依存度の高い者ほど、四六時中ネットから離れられず、人間関係に自信がなく、孤立感や抑うつ傾向が顕著でネット交流に逃げ込む指向が見て取れる。

■学校教育のスタンスと生徒指導

 子どもたちの「自信のなさ」や「孤立感」は、ネット世界がもたらしたものではない。共同性を低下させた大人社会とその教育力の低下がもたらしたもので、いじめや暴力行為、不登校や引きこもりなど、問題行動や不適応を生む要因となっている。

 学校は一方で、ネットに依存することなく、たくましく育ち、自信に満ちた子どもたちがいることを知っている。そこには、子どもたちが主体的に集団にかかわり、共通の目標の下で役割を果たし、葛藤を乗り越えて確かな仲間との関係性を獲得して自立に歩み出す姿がある。そうした自信は、彼らがつくった現実の「対峙できる確かな人間関係」がもたらしているのである。  「対峙できる確かな人間関係」を保証する「子どもたちのためのコミュニティ」として、学校を再構成する必要がある。現実の関係性の中に子どもたちを引き戻し、葛藤を乗り越えて仲間と協働する喜びや共感をもたらす教育活動を一層活発に行う必要がある。

 また、人間関係に臆病な子どもたちへの理解を深め、教育相談を重視するとともに、情緒交流の方法など、社会的スキルの育成を計画的に推し進める必要がある。

■子どもたちによるネット利用の「本流づくり」

 ネット利用に係る啓発活動やルールづくりなどは家庭を中心に社会全体で進めるべきだが、学校が本領を発揮すべき取り組みがある。それは子どもたちによる問題解決への取り組みである。

 子ども自身も、SNSの利用などで〝はずしや中傷〟〝即レスや既読スルー〟など、ストレスの多い生活を余儀なくされている。生徒会などの活動を通して、こうした問題の克服に取り組むことは、正しいネット利用という「本流」を子どもたちの世界に創り出すことになる。

 大切なことは、子どもたち自身が実態を把握し、自らその解決方法を考えて取り組むことである。既に、各地でこうした活動が始まっている。子どもたちによる町ぐるみのネット利用の「本流づくり」が急務といえる。

 ※1=「未就学児等のICT利活用に係る保護者の意識に関する調査報告書」総務省情報通信政策研究所(平成27年7月)※2=「平成25年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」内閣府(平成26年2月)※3=「小中高生&保護者を対象としたスマートフォンに関する調査」デジタルアーツ(株)(平成27年1月)※4=「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査」総務省情報通信政策研究所(平成26年7月)※5=「未成年者と保護者のスマートフォンやネットの利活用における意識調査」デジタルアーツ(株)(平成27年6月)



近藤昭一(こんどう・しょういち)専攻分野は生徒指導、学校の経営と危機管理、教育相談、メディアコミュニケーションと人格形成。22年間の中学校教諭を経て、中高校の校長職、横浜市教委生徒指導担当部長、教育センター所長などの職歴がある。著書に『モバイル社会を生きる子どもたち』(時事通信出版局)、『子どもの危機と学校組織』(教育出版)など。

(詳細は「教育新聞」紙面に掲載)