ICTで学びの世界を広げる 第41回全日本教育工学研究協議会全国大会富山大会

2015年10月19日号掲載

 「広げよう学びの世界」をテーマに、第41回全日本教育工学研究協議会全国大会富山大会が10月9、10の両日、富山市の富山県民会館、市内6校の小・中・高・特別支援学校を会場に開催された。

 初日には、市立芝園小学校・同中学校、富山大学人間発達科学部附属小学校・附属特別支援学校、県立富山中部高校、雄峰高校で、ICTを活用した各教科の授業を公開。PC1人1台の活用、電子黒板・プロジェクタ・実物投影機の活用、タブレット、視聴覚機器の使い方の工夫、情報モラルなど、さまざまなテーマに焦点が当てられた。

 2日目には、研究発表とワークショップが行われた。研究発表では、教科指導におけるICT活用、ICT環境の構築とサポート、校務の情報化、情報活用能力の育成、情報モラル・情報セキュリティ、特別支援教育、教員研修・教員養成、教育・学習用ソフトウェア開発・評価、学習指導におけるICT活用、メディア教育・メディアリテラシーなどの取り組みが報告された。

 ワークショップでは、デジタル教科書・ノート・教材を生かした授業づくり、電子黒板・実物投影機、タブレットを活用した授業づくり、情報教育・思考力育成を目指す授業づくり、特別支援教育におけるICT活用、1人1台の情報端末利用を生かす教委と学校の取り組み、スマホ・タブレット時代の情報モラル指導のポイントなどについて、テーマに沿って理解を深めた。

◇使うのが目的ではない◇

 大会を通じて同協議会会長で東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授は、「学びの世界を広げるICTへの期待」をテーマにした講演の中で、教育の情報化の構成要素である(1)ICT活用(2)情報教育(3)校務の情報化――を念頭に、ICT活用における重要なポイントを指摘。「実物投影機やPCなどの画像を、プロジェクタや大型テレビ、電子黒板などに大きく映し、児童生徒にも分かりやすくなるように授業を改善すること。ICTを使うのが目的ではなく、使うことによって授業が分かりやすくなることがポイント。どのタイミングで、何をどのような目的で映し出すか、それは子どもたちの思考に合っているかが大切だ」と語った。

 その上で、「授業インフラとしてのICT整備・活用が大切。授業をうまくやるために、先生がどういうふうにICTを授業の環境としてとらえるかが大事。その手始めが、実物投影機の活用である。多くの先生は教科書を使って授業をする。教科書を大映しにすることで、教科書の一定部分にフォーカスし、教科書上の情報を絞り込み、そこに子どもを集中させて考えさせ、考える力を向上させる。またICTが簡単に使えるようになれば、教師も毎時間使いたいと思い、常設を希望する。するとICTは透明化する。透明化するとは、使うことが自然な前提となることだ。その際に重要なのは、子どもの様子をしっかりと見ることだ」とした。

◇教育を新しくするのは教員◇

 また「多様な教員を前提にした実践研究、学校の組織論に立った実践研究、エビデンスを明確にした実践研究。これらの3点の実践研究不足は、身近な教委や管理職などに理解してもらえない結果を招いた」と課題を指摘。「教育を新しくするのはICTではなく、取り組もうとする教員」と述べた。情報教育については、「情報化がさらに進んだ社会で、メディアを適切に読み解き、情報を適切に取り扱い、情報を上手に活用していく能力を育成することが大切。情報活用能力が当たり前となったいま、普通の場面で普通にやっていくことが大切」と話した。

 さらに「いまキーボードからの文字入力をはじめ、ICTの基本的な操作に大きな課題があるが、これは、個人差というより学校差をなくしていくことが大切である」と課題を指摘した。  校務の情報化に関しては、「校務を合理化、一元化、共有化し、教師に時間的、精神的余裕を与え、児童生徒に向き合う時間に振り向けて、エビデンスを提供しチーム学校を堅牢にすることが大切。校務の情報化は教師の情報活用能力の育成の場であり、教師のポテンシャルを上げる機会にもつながる」と述べた。

 最後に、「学びの世界を広げるのは児童生徒自身で、それを促進するのは教師であり、ICTは学びを『広げやすくする』ツールである。『ずっと先の未来』と『足下の現実』のバランスを見据えながら、1人ではなく、みんなでやれるような、学校現場で広がる実践を行うことが大切である」と結んだ。

(詳細は「教育新聞」紙面に掲載)