(道徳教育 これからのポイント)子ども像の把握や指導内容など確認を

特別の教科 道徳では、「道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習」などを目指す。道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる視点やいじめへの対応や評価の在り方などの課題を踏まえ、3人の識者にこれからの道徳教育のポイントなどを改めて提言してもらった。


子ども像の把握や指導内容など確認を
文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 赤堀博行

今年は、学習指導要領の道徳に係る部分が改正され2年目となる。小学校は平成30年度、中学校は31年度から新たな形で道徳教育が実施されるが、今年度から教育課程の編成および指導について、改正後の学習指導要領の規定の全部、または一部によって実施できる特例が示されている。

今回の改正は「教科化」というキーワードで進められた。「教科化」はこれまでも議論があった。平成12年、教育改革国民会議の「教育を変える17の提案」では、「学校は道徳を教えることをためらわない」があり、小学校に「道徳」、中学校に「人間科」、高校に「人生科」などの教科を設けるなどが提言された。また、平成20年、教育再生会議の最終報告では、徳育を「教科」として充実させ、自分を見つめ、他を思いやり、感性豊かな心を育てるなどが掲げられた。

これまでの「教科化」の議論の背景には、学校の道徳教育に対する国民の懸念と期待がある。「道徳を教えることをためらわない」は、学校が道徳を教えるのをためらっているのではないかとの懸念と、道徳教育を充実してほしいという期待であろう。

道徳授業は義務教育で行う教育指導であり、国として子どもに受けさせなければならない教育として、どこの学校でも同じ程度に行われるのが原則である。道徳授業を適切に受けられないというのは、子どもの教育を受ける権利の侵害にもつながる。

中教審答申「道徳に係る教育課程等の改善について」では、学校や教師によって指導の格差が大きい点を課題としている。どこの学校でも同じ程度に道徳授業を行ってほしいという願いから、教科書を配布して、一定水準の授業を確保するなどの「教科化」の議論が起こったと考えられる。

今回の「教科化」の議論は、これらに加え、いじめ問題への対応がある。いじめ防止はわが国の喫緊の課題として教育再生実行会議がその対応を協議し、第1次提言「いじめの問題等への対応について」で、まずもって「心と体の調和の取れた人間の育成に社会全体で取り組む。道徳を新たな枠組みによって教科化し、人間性に深く迫る教育を行う」と示した。

この提言から公布、施行された「いじめ防止対策推進法」は、教育委員会や学校が講じるいじめ防止の基本的施策の第一に道徳教育の充実を挙げている。これはまさに道徳教育の充実に対する期待であり、学校教育に携わる者が重く受け止めなければならないのである。

全面実施に向けて、各学校が行うべき第1は、目指す子ども像を明らかにした道徳教育の目標設定である。そのためには、自校の実情や子どもの実態などを周到に把握する必要がある。

第2に、目標に基づき重点的に指導する内容の確認である。各学校の道徳教育は、この重点内容を中心に推進される。

第3は、具体的な指導の内容と時期の明確化である。道徳教育は教育活動全体を通じて行うものであり、具体的な指導の時期や内容を計画するのが必要であり、校長の方針に基づく全教職員による目標達成のための共通理解、共通実践が求められる。

第4は、道徳授業の確実な実施である。道徳授業は、単に読み物教材の登場人物の心情理解や望ましいと思われる決まりきった内容を言わせ書かせる学習を行うものではない。子どもが自分との関わりから道徳的価値について考え、友達同士の交流を通して自己の生き方についての考えを深める「考え、議論する授業」を行うのが大切である。

子どもが今後、出合うであろう、答えが一つではない道徳的な課題に主体的に関わり、道徳的価値の実現を図る授業改善に努めていきたい。

(国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官)


赤堀博行(あかぼり・ひろゆき) 東京都公立小学校教諭、東京都教育庁指導部主任指導主事を経て現職。主な著作に『道徳教育で大切なこと』『道徳授業で大切なこと』(東洋館出版社)、『心を育てる要の道徳授業』『道徳・特別活動の本質―青木理論とその実践』(ぶんけい)、『道徳授業の発問構成』『道徳の時間の特質を生かして授業の創造』(教育出版)、『道徳授業の定石事典』(明治図書出版)などがある。

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