(道徳教育 これからのポイント)「考える道徳」をチームで目指そう

特別の教科 道徳では、「道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習」などを目指す。道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる視点やいじめへの対応や評価の在り方などの課題を踏まえ、3人の識者にこれからの道徳教育のポイントなどを改めて提言してもらった。


「考える道徳」をチームで目指そう
畿央大学大学院教育学研究科教授 島 恒生

道徳の教科化に向けて準備が進んでいます。キャッチフレーズは、「読む道徳」から「考える道徳」へ。中教審答申「道徳に係る教育課程の改善について」は、主に次の課題を挙げています。

▽道徳教育の要である道徳の時間の特質が生かされず、軽視されがち▽発達の段階などを十分に踏まえず、児童生徒に分かりきったことを言わせたり書かせたりする授業▽読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導――です。

特に、「読む道徳」の現実は、教材を「読む」だけの授業と同時に、「今日はどんな答えを言えばいいだろうか」と、教師の意図を「読む」授業になっている点です。この課題には、各学校で、次の3点の克服が重要になると考えます。

(1)発達の段階を押さえながら、みんなで考え合い、道徳的価値の大切さや生き方を発見できる道徳の授業づくり(2)教育活動全体で行う道徳教育と要である道徳科をきちんとつなぎ、子どもたちの自信や誇りを育てる(3)教職員がチームとなり、道徳教育の推進や授業改善に向かって力強く取り組む体制づくり――です。ここでは、特に3点目を述べます。

最近は、子どもたちに協働型の学びが求められていますが、教員も協働型の研修体制をつくりましょう。具体的には、授業を開くのです。互いの道徳授業を見合い、みんなで授業づくりに取り組み、大きな成果をあげている学校が増えています。私が訪問した多くの中学校では、次の成果をよく聞きます。

▽生徒理解が進んだ。全ての生徒が活躍できた▽数学の授業が変わるなど、教科の授業が劇的に変わった▽職員室に道徳の話題が出る雰囲気ができ、授業の成功談や失敗談を自由に話せるようになった▽生徒が道徳の時間を楽しみにするようになった▽学級経営が充実し、学習態度や学力の向上につながった▽子どもたちが自立へと向かい、生徒会などの特別活動が充実した――です。

まず、生徒理解が進んだという点は、教師が一方的に伝える授業から、生徒が自分の考えを語り、練り合う授業に変わったのです。また、教師の視点が子どもの内面の育ちに向き、全ての子どもの生徒理解が深まったのです。さらに、道徳を中心にみんなで磨き合う中で、授業力が高まり、それが、個々の教科の授業改善につながり、授業について語り合う職員室の雰囲気が生まれたのです。

中学校は、教科担任制のため、教科ごとの研修になりがちです。教科の枠を超え、生徒の学びの姿勢や集団づくり、言語活動といった共通テーマで取り組んでも、最後は、各学習のねらいに迫り、生徒の目が輝く学び合いが成立するには、教科の専門性が問われます。道徳の授業を通して、全教員が専門性を磨き、高まり合えるのです。

道徳科は、教師と子どもたちが心を開き、ともに語り合い、自らを振り返る時間です。授業研究を深めると、当然、この点が促進されます。それが、学級経営の充実や学習態度・意欲の向上、学力の向上につながり、生徒会なども活性化し、子どもたちが自分たちの学校や学級を考え、進んで活動するようになったのです。

これは、小学校も同様です。道徳教育や道徳科の時間は、子どもたちが自立を目指すものであり、教師自身も子どもたちの力を信じて任せるようになるからでしょう。そのためにも、教育活動全体で行われる道徳教育と、要としての道徳科の時間のねらいを関連させ、特質を生かした指導を図るのは、とても大切です。

道徳の教科化に向け、管理職のリーダーシップと教職員の学び合いの姿勢を大いに発揮し、みんなで楽しく、チームで取り組んでいきましょう。


島恒生(しま・つねお) 文科省「心のノート」作成協力員、文科省「小学校道徳 読み物資料集」作成協力者、中教審初等中等教育分科会道徳教育専門部会専門委員、文科省「小学校学習指導要領解説 道徳編」「同総則編」作成協力者、文科省「道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議」委員などを務める。専門分野は、道徳教育、特別活動、学級経営。主な著書に『道徳教育推進教師の役割と実際』(教育出版)ほか。

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