【連載】子どもの自立を育む学級経営 第3回 前向きな気持ちを波及させる

京都文教大学准教授 大前 暁政

昨年度荒れていた子が今年は頑張るようになったとします。すると、その荒れた子に追随していた子も自然と頑張るようになります。誰かが頑張るようになると、だんだんとそれが教室のムードとして浸透していき、やがて全体に波及するのです。このような「前向きな気持ちの波及効果」を教師は意識して最大限利用するべきです。

ある年、荒れていた高学年で学年全体の合同体育をすることになりました。荒れていた学年なので、前年度の体育は授業の体をなしていなかったのです。誰かがふざけだして、それに続いた子が自由気ままに行動する状態でした。そこで、第1回目の体育は学年全体で行い、さらに体育主任の私が担当することになったのです。ほかの先生は体育主任としての「厳しい指導」を期待しているようでした。  さて、新しい学年になって初めての体育授業です。授業前から、話に聞いていた以上に騒がしい状況でした。体育ということでいつもよりテンションが上がっているらしいのです。授業前の休み時間には、多くの子が「今日は何すんの?」と聞きにきました。

私の学級はその日までに落ち着き始めていました。そこで前もって自分の学級の子に言っておきました。「最初の学年全体の合同体育だから、いつもよりちょっと気合いを入れていこうね。特に、声を大きく出すことを頑張ってね」と。

さて、授業が始まり、まず私の学級の日直に準備体操の号令をかけさせました。「みなさん立ってください」と日直の子がいつもより大きな声で言いました。ところが、さっと立ったのは15人ほど。ほかの子は砂をいじったり、おしゃべりをしたりといった具合です。

ここで「だらだらと立ちません」と注意しました。「日直ががんばっているのに態度が失礼だ」と。そうしてもう一度号令をかけさせました。今度は、きちんと立てました。まずは、ピリッとした雰囲気をつくりだしたわけです。

続いて、体操を始めました。ところが今度は声が小さいのです。というより、声を出していなくて当たり前の顔をしています。私の学級は前もって言ってあるので、いつもよりは大きな声を出していました。しかし、ほかの学級の子が出ていません。

体操を続けていると、少しだけ変化がありました。私の学級の声に引きずられて、何人かはしっかりと声を出して「1、2、3、4」と言いながら体操し始めたのです。

準備体操が終わって、「大きな声で体操ができた人?」と尋ねると手はほとんど挙がりませんでした。私はしっかりと声を出すときは出すことが大切だと趣意説明をし、たくさん声が出ているほかの学級の子をほめました。こうして、50メートル走のタイムを計ることを告げました。

「40メートルぐらいで一番疲れるから、ここでしっかり応援してね」と指示しました。これも大きな声で応援できている子とできていない子とに分かれていました。しかし、私は特に指示をせず見守りました。私の学級は大きな声で応援しています。その声にだんだんとほかの学級も引きずられていく様子が見て取れたからです。

授業の最後に全員を集めて尋ねました。「大きな声でしっかり応援できた人?」今度は天に向かって突き刺さるように手が挙がりました。おしゃべりをしていたり、応援できなかったりした子はドキッとしていました。90%超の子がまっすぐ自信をもって手を挙げたからです。たった1時間でも、前向きな気持ちがほかの子に波及したのでした。

授業にふさわしいピリッとした雰囲気をつくるのは教師の仕事です。ピリッとした雰囲気がつくり出せたら、今度は子どもの前向きな気持ちを浸透させる指導に入ればよいのです。

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