【連載】魅力ある教師となるために 第4回 趣味で授業に深まりをもたらす

多賀歴史研究所長 多賀譲冶

 
釣り、音楽、写真、旅と趣味を持つ人は多い。私の教師仲間にも蘭を愛し栽培する人、歩くのが好きで五街道全てを踏破した人、陶芸にはまって本格的な窯を設けた人など数多くいる。一方、「部活が忙しくてそれどころじゃない」という人もいる。もっとも部活が趣味といえばそうなのかもしれない。私も遺跡探訪が趣味といえば趣味だが、歴史をメシの種にしているので、どちらかといえば本業に近い。

 私の友人(先輩)に日本初の民間考古学研究所を立ち上げた男がいる。今から35年前のことで、当時、発掘調査は大学や自治体が中心となって行っていただけに「金儲け」と揶揄されて厳しい目で見られていた。しかし、彼は丁寧な調査と精緻な記録、そして細心の学術的知見に基づき、当時は調査終了から何年もかかって発刊されていた報告書をどこよりも早く、しかも高度な内容で次々と世に出していった。この後、これをまねて雨後の竹の子のように民間研究所が作られたが、その多くは淘汰されて今日に至っている。本当に良い仕事をしたところだけが残っているのだ。

 さて、この男の趣味が釣りで、しかもカジキマグロなどの大物狙いだ。神経を使う仕事の合間を見て日本国中の海に現れる。そしてデカイ魚を釣って仕事に戻る。このスイッチが彼の人となりや仕事に大きく寄与しているのは間違いない。

 集中して仕事をするのはいいが、そのあまりに心が折れたり自分が見えなくなったりすることが人にはある。言わずもがなだが、息抜きは必要で面白ければなおいい。かくいう私もアウトドア嗜好が高じてハンターになってしまった。

 これは野生動物が増えすぎて山林や里山で被害が出ているという社会的ニーズに応えるものでもあるが、畑や釣りはそこそこに経験済みの私にとって狩猟が未知の領域でもあったからだ。さらに農耕、漁労、狩猟と全てをやらなければならなかった古代人の日常や思いに迫ってみたいと思ったからでもある。

 猟期は晩秋から冬にかけてなので、「タツマ」と呼ばれる持ち場にいると、足の先から底冷えがする。高齢者となったわが身には、チトこたえるのだが、「そっちへ行くぞ」の無線でアドレナリンが大量に放出され、寒さなど吹っ飛んでしまう。この感覚は普通の人ではなかなか味わえないだろう。家族のために獲物を得ようとする古代人の気持ちにも少しだけ触れたような気がする。そして「明日から、また頑張ろう」という気持ちが湧いてくる。

 「生涯一教師」という言葉がある。学校の仕事しかしない、できない「先生バカ」のように聞こえるが、実はそうではない。諸先輩には数多くの一教師がいたが、どの人も油彩やハンドクラフト、登山や短歌など数え上げたらきりがないほどに多彩な趣味を持っていた。

 病膏肓に入る本職顔負けのレベルに至った人もいる。教師の命は授業である。その授業をより深くより豊かにするには、授業や子どものことばかり考えていてはいけないのである。

関連記事