【連載】教師の“4ぢから”を高める 4 まとめる力① 織物モデル

文教大学教育学部教授 会沢信彦

 

連載第1回でふれた私の元ゼミ生が1年で小学校を退職した理由は、「やんちゃな男の子の気持ちがつかめませんでした」というものでした。これは、言い換えれば「学級(の子どもたち)をうまくまとめられなかった」ということだろうと思います。

首都圏の小学校では、教員採用試験に合格すると(実は合格していない臨時的任用も)即担任を持つことになります。就職してすぐにこの道三十数年のベテラン教師と同じように、学級の子どもに対し、全責任を持つのです。

企業でいえば、まさにブラック企業そのものですが、これが現実です。中学校や高校、特別支援学校でも、いきなり担任こそ持たないかもしれませんが、副担任として、何より授業担当者として、個人ではなく学級集団を対象とすることにかわりはありません。そのため、授業を行う「伝える力」とともに、教師には学級を「まとめる力」が求められます。

その際、参考になるのが、横藤雅人北海道北広島市立大曲小学校長が提唱する「織物モデル」です。織物モデルとは、学級経営や授業の在り方を、「縦糸」(秩序)と「横糸」(教師と子ども、子ども同士の人間関係)で説明しようという考え方です。

学級経営や授業では、まずしっかりとしたルールやシステムを作る「縦糸」を張る作業が必要です。しかし、縦糸だけでは布は織れません。縦糸を張るのと並行して、教師と子ども、子ども同士の間に温かいふれあいのある人間関係を築く「横糸」を張る作業が求められます。そして、横糸が豊かに張られれば張られるほど、縦糸は安定し、ついに縦糸は見えなくなります。

ところで、学級のアセスメントツールとして近年、多くの学校で取り入れられている「Q―U」の開発者である河村茂雄早稲田大学教授は、目指すべき学級像としての「満足型学級」の条件は、「ルール」と「リレーション」を兼ね備えているとします。私には、河村教授と横藤校長が同じ内容を別の言葉で指摘しているように思えてなりません。

横藤校長は、縦糸と横糸を兼ね備えた教師を、「凜としてにこやか」と表現しています。しかし、特に経験の浅い若手教師の多くは、「甘くてにこやか」か、逆に「怖くて冷ややか」になりがちです。

「凜としてにこやか」な教師になることは簡単でないかもしれません。ただ、その第一歩は、まず知識として、「織物モデル」「ルールとリレーション」の重要性を理解することではないかと考えています。

※参考文献=『必ずクラスがまとまる教師の成功術!』(野中信行、横藤雅人共著、学陽書房)