【連載】これからの生徒指導と学級経営 4 基本的欲求を満たす指導

生徒指導コンサルタント 吉田 順

 

人は生まれながら、本能としていくつかの基本的欲求があります。本能ですから誰にでもあり、満たされないと満たそうとする行為をとるということです。

例えば「仲間をつくりたい」という欲求がその1つです。別の言い方をすると「(集団に)所属したい」という欲求です。ですから、集団に所属するためには、かなり愚かなことでもやってしまいます。善悪が基準なのではなく、その集団の規律や価値観が基準なのですから、教師にどんなに叱られても、集団に所属していたければ、その集団の価値観に従います。何度叱っても効き目がないのは、背景に、それを満たしたい欲求があるからです。

また崩れかけている生徒を心配して教師や親が、「あの集団にいたらだめになるよ」とか「あの子と離れなさい」などと言うと、猛烈に反発し、逆効果になる理由も分かります。

集団に所属し仲間を得ると、今度は仲間から「認められたい」などという欲求が出てきます。これも人の基本的欲求の1つです。もしその集団が逸脱した集団ならば、問題行動の競い合いになってしまいます。仲間の1人が教師に腹を立ててドアを蹴ったなら、認められるため、その上をいくことによって仲間に認めてもらおうとします。例えば、教師に暴言を吐くなどということです。こうして教師暴力が発生する学校になっていくのです。

これらの点を踏まえると、私たちの生徒指導や学級経営は何を目指せば良いか分かるのではないでしょうか。

子どもたちの健全な仲間づくりを助けることや人の役に立ち認められる体験をたくさん積ませることではないでしょうか。規律指導中心の生徒指導や学級経営では、この欲求を満たすことができないばかりか、ますます欲求不満状態になります。

前回述べた「根っこ」を探す生徒指導も、基本的欲求の何が満たされていないのかを知るためです。「家族に愛されたい」という基本的欲求が満たされなければ、当然歪んだ形で満たそうとします。人はまず親から愛されているという実感がないと、家庭は安住の場所にはなりません。

長い間、家庭崩壊の中で生活していると、深夜徘徊を繰り返して地域の逸脱集団に所属し、やがて本物の非行生徒になっていくのも不思議ではありません。

では「健全な仲間をつくる」とか、「認められる体験を積む」とは具体的にはどんなことをすればいいのでしょうか。それは教育活動のあらゆる場面にあります。授業・学級活動・行事・委員会活動・部活動・朝と帰りの会・掃除の時間などがそうです。

中でも、その効果が高いのは行事です。企画から実行まで活躍できる場面をたくさん設定できます。そして、子ども同士の関わりを通じてしか達成感を感じられませんし、エンターテインメントにも優れていますから、自主的に取り組みやすいのです。

次回は、どの学校でも実施している合唱コンクールを例に具体的に述べましょう。

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