【連載】教師の“4ぢから”を高める 7 ケアする力① 学校心理学の背景

文教大学教育学部教授 会沢信彦

 

学校には、さまざまな問題や課題を抱えた子どもが存在します。教師には、そのような子どもたちを個別に援助する「ケアする力」が求められます。学校教育の中では、特別支援教育や教育相談が主にこの役割を担っているといえるでしょう。また養護教諭は、まさにこの力が職務の中心となります。

これまで、心理的、あるいは発達的な課題を抱えた子どもを理解し援助するための教育相談では、その基礎として臨床心理学が大きな役割を果たしてきました。まさに臨床心理学をバックグラウンドにして、子どもたちの支援に当たっているのが臨床心理士を中心とするスクールカウンセラーです。

しかし、一方で、どちらかといえば重篤な精神病理に対する理解と治療を中心に発展した臨床心理学の考え方は、子どもの成長・発達の場である学校にそぐわないのでは、という指摘もたびたびなされてきました。それに、何といっても教師の仕事は教育で心理的支援だけではありません。

そんな中、最近、教育現場で大きな注目を集めるようになってきたのが学校教育に特化した心理学である「学校心理学」です。もともとアメリカを中心に発展した学問ですが、日本でも教育相談、生徒指導、特別支援教育、キャリア教育などを基礎づける学問体系として、近年大いに関心が高まってきています。詳しくは参考文献に譲るとして、以下、学校心理学の特徴を3点で紹介します。

第1に、子どもの問題を「こころ」の問題(心理・社会面)だけでとらえるのではなく、学習面、進路面、健康面など、学校生活のあらゆる面からサポートしていこうとします。

第2に、課題を抱えたひとりの子どもをチームで援助することを重視します。そのためのツールとして「援助チームシート」も用意されています。

第3に、子どもの問題だけに目を向けるのではなく、問題を解決するために役立つ資源(リソース)に焦点を当てます。リソースには、子ども自身の持つ自助資源と、周囲の環境に存在する援助資源とがあります。

学校心理学には「問題児」という言葉はありません。問題や課題を抱えた子どもは「学校生活に苦戦している子ども」であると考えます。安心して充実した学校生活を送れている子どもは問題を起こす必要などないからです。

私は、問題を起こす子どもを前にしたときに、即座に「苦戦しているのだな」ととらえることができることが、「ケアする力」の第一歩だと考えています。

■参考文献=『よくわかる学校心理学』(水野治久編著、ミネルヴァ書房)

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