【連載】これからの生徒指導と学級経営 7 少数の問題生徒にとらわれない

生徒指導コンサルタント 吉田 順

 

80年代の校内暴力期の時でさえ、暴力的手段を行使した生徒はごく一部でした。

例えば、約50人の警官隊が導入されたことで全国的に知られた80年の三重県尾鷲中事件は、3年生の十数人が中心メンバーでした。3年生だけで350人を超える大規模校でしたが、中心の生徒は5%足らずです。一般に荒れている学校といっても、比率はその程度です。

学校は数人の荒れた生徒がいるだけで授業妨害が頻発し、一般生徒は甚大な被害を受け、教師集団は精神的にも疲弊します。しかし、今日の学校現場では、何人かの荒れた生徒がいるのはやむを得ないことなのです。もちろん、そういう生徒が1人も出ないよう、日本中の教師たちは努力していますが、それでも少数の問題行動を行う生徒が出るのは避けられないのが現実です。

子どもは家庭や社会全体の環境の中で育ちます。学校の教育力だけで育っていくわけではありません。紙面の都合上、詳細は省きますが、95%以上の生徒(中間集団)への対応がポイントなのです。数人の荒れた生徒がいても、中間集団が健全に育っていると、荒れた生徒の影響は受けにくく、荒れた生徒の人数も増えません。荒れた生徒も中間集団の生徒から非難をされたくないから、問題行動も拡大しません。そこそこ学校は落ち着きます。

ところが、この中間集団が健全に育っていないと、荒れた生徒と同じような言動はとらなくても、荒れた生徒の言動を支持したり、観衆としてあおったり、憧れて仲間になったりするのです。さらに荒れた生徒の人数が増えると集団化して、問題行動は拡大し、はては問題行動の競い合いになり、学校は大きく荒れていきます。

ですから、この中間集団を健全に育てるというのは、学校を左右する問題なのです。荒れている生徒への指導もしますが、荒れていない中間集団の対応にも取り組まなければいけないのです。荒れを克服した学校は、荒れた生徒に全職員が全エネルギーを費やして熱心に対応したのではなく、むしろ中間集団を育てることに相当なエネルギーを費やしているのです。

これまでの連載で示した「尊敬される教師になる」「行事には〝哲学〟がある」という話も、この中間集団を健全に育てるための手だてです。

もしこのときに、「指導の二重構図」が起きていると大変です。中間集団の多くの生徒は教師集団から心が離れて、「先生たちはずるい、不公平だ」と尊敬しなくなります。どんな指導にも従わなくなります。学級経営にも苦労します。

一方、厳しい規律(実際は頭髪、服装)指導で、学校を落ち着かせるのが無理だというならば、それでは違反の生徒は放っておくのでしょうか。次回は違反生徒の指導について話します。