【連載】温故知新の学びから考える 7 振徳館で「天性の真」を伸ばす

新潟県小千谷市立小千谷小学校教諭
平澤林太郎

 明治元年、小千谷の五智院で小千谷小学校は「振徳館しんとくかん」という名で開校した。その後、振徳館は小千谷小学校と呼び名を変えた。平成9年、平澤憲一校長は、教職員や地域の方々とともに創学の思いを児童たちに伝えようと学校内に教室「振徳館」を復活させた。開校当時の教室の雰囲気を出すために、床には畳を敷き、柱や梁を古民家からゆずり受けて、地域の大工さんたちと作り上げた。

 この振徳館では、さまざまな教育活動が展開されている。学校支援ボランティアによる本の読み聞かせや囲碁・将棋、和の心クラブによる琴の演奏など。もちろん授業でも活用されている。振徳館は心を落ち着け、静かな環境の中で学習できるため、児童たちに好評である。

 今年度、新卒で着任した2人の学級担任は、この振徳館で授業に取り組んでいる。2学年担任の目黒幸士郎教諭は、同校が所有している屏風を振徳館に広げ、そこに描かれた水墨画から感じたことを話し合った。この水墨画は江戸時代に小千谷の画家が描いたものである。児童たちは興味をもって六曲一双の屏風を眺めて語りはじめた。

 意見は「自然がいっぱいだ」「昔の人は髪型が違うよ」「ちょんまげをしているね」「屋根が藁でできている」など。「馬に乗っている人がいる」「牛もいるよ」「馬は人を運んで、牛は畑を耕しているんだ」「川に舟を浮かべている」「昔は信濃川を舟で渡っていたんじゃないかな」といった気付きも飛び出していた。

 同教諭は「この絵の季節はいつかな」と問うた。児童は「右の絵には梅と笹、左の絵には、もみじがあって雪が積もっているよ」「小千谷の春、夏、秋、冬のきれいな風景が描かれている」「この絵を描いた人は小千谷の自然の素晴らしさを多くの人に伝えようとしたんだ」とつぶやいていた。

 児童たちは、ふるさと小千谷の自然や文化の素晴らしさを伝えようとする先人の思いに気付き、自分たちも小千谷の自然や文化を大切にしようとする意識を高めていったのである。

 4学年担任の小海詩織教諭は、道徳の時間に学年目標の「のびよう高く 心をみがいて さかせよう仲間と 大きな花を みんなが笑顔 ひまわり学年」について振徳館で考えた。

 授業前半は小グループで自分の考えを出し合った。畳の心地よい香りと感触で、仲間との距離は近く、話しやすい雰囲気の中で話し合いが進んだ。後半はグループごとに話し合いの報告を行った。

 児童は、「『のびよう高く』は、勉強や運動ができるようにがんばる」「『心をみがいて』は、人の話を聴く。人や物を大切にする」「『さかせよう仲間と』は、やさしい言葉遣いをする。悪いことをしたら謝る」「『大きな花を』は、心を一つにする。絆を深める」「『みんな笑顔』は、あいさつを元気よくする。魔法のあいさつを普段からする」などの思いを示した。学年目標を振り返る中で自分たちの生活を見直し、日々の生活で心がけることを学級全体で共有することができた。

 振徳館は、語り合い、聞き合いやすい雰囲気がある特別教室である。学び合い、高め合いやすい空間である。今後もこの空間を大切にして、子どもたちが生まれながらにもっている可能性「天性の真」を伸ばしていきたい。

 ※「天性の真」とは、小千谷小学校創設の建白書に書かれている創学の理念。