【連載】教師の“4ぢから”を高める 8 ケアする力② 心のピラミッド

文教大学教育学部教授 会沢信彦

 

学校心理学が示す「学校生活に苦戦している」子どものケアを行うには、その子どもがなぜ苦戦しているのか、その背景を理解しなければなりません。児童生徒理解やアセスメントが重要であるゆえんです。その際の大変有用な枠組みとして、早稲田大学の菅野純名誉教授が提唱する「心のピラミッド」(図)モデルがあります。

ピラミッドの頂上は、「心の豊かさ、勁(つよ)さ、広さ、あたたかさ、自己発揮、活躍、達成など」とあります。有名なマズローの「欲求の階層説」では、頂上は「自己実現の欲求」ですが、「心のピラミッド」モデルの頂上もひとことで言えば「自己実現」ではないかと私は考えています。私たちは、子どもの自己実現を願って、日々、教育活動にいそしんでいるのです。

しかし、丸腰では自己実現できません。自己実現するためには、しかるべき力が必要です。それが上から2段目の「社会的能力」です。私は、この部分は、学力を含めた「生きる力」ではないかと考えています。学校教育の目的は、まさにこの部分を子どもたちに身につけさせることでしょう。

「生きる力」を身につけるためには、子どもたちの「学びたい」「成長したい」という意欲が必要です。そんな意欲を持つためには、「安心、楽しい、認められる」という「心のエネルギー」がなければなりません。「この学級は安心できる」「学校生活は楽しい」「友達や先生は自分を認めてくれる」という思いがあるからこそ、勉強や学校生活に意欲を持つことができるのです。「心のエネルギー」を持つためには、さらなる土台が必要です。それが、「基本的信頼感」と言い換えられる「『人間の良さ』体験」です。

本来は家庭で築かれるべきこの土台ができていない子が、実は少なくないのではないでしょうか。そんな土台がない子どもが一人でもいる学級、学校の先生方のご苦労は計り知れません。しかし、この土台を積み上げずに、子どもの成長・発達を促すのは不可能です。

もし、「『人間の良さ』体験」を築いていない子どもが入学してきたら、6年間、あるいは3年間かけてこの部分を築くことが、その子の学校教育の目標となるのです。これは、根気のいる大変な仕事です。しかし、教師同士で協力すれば、それは不可能ではありません。この人生の土台を築くことが子どもにとって一生の財産になるはずです。

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