【連載】子どもの自立を育む学級経営 第9回 2つのロールモデルを意識

京都文教大学准教授 大前暁政

子どもは所属する集団の影響を強く受けます。所属集団によって、その雰囲気に染まってしまいます。例えば、人を馬鹿にする行動が常態化した集団にいるとしましょう。教師も特に指導をしません。こういう集団で1カ月も過ごすと悪口はどんどん増えていきます。もともと悪口を言わなかった子も、だんだん悪口を言う雰囲気に染まっていくのです。

集団の影響力には強い力があります。この集団の影響力は大きく2つに分けられます。一つは「教師の影響力」。もう一つが「子ども集団の影響力」です。子どもがだめだという前に、そもそも集団の雰囲気をつくっているのは教師だと強く意識しなくてはなりません。ただ、反対も言えます。教師が子どもの「ロールモデル」になりえるのなら、子どもは望ましい方向に著しく成長を遂げる場合があるのです。

「ロールモデル」とは、「こんな風になりたい行動や考え方の模範になる人」です。授業からの脱走を繰り返し、教師暴力や暴言が日常化している子も尊敬する教師の教室では嘘のように落ち着きます。その教師の発言はしっかり聞くのです。さぼる、逃げる、ごまかすが常態化し、2次障害の疑いがある子でも、尊敬する教師の元では適切な行動をとろうとします。教育効果を最大限高めようとすれば、教師こそ「ロールモデル」になる努力をしなくてはならないのです。

よく、「人によって態度を変えるのはだめだから、子どもを人によって態度を変えないよう指導しよう」という教師がいます。人によって態度を変えるのは人の常です。子どもだけに変えないよう強要すると無理が出てきます。子どもを変えようとするのではなく、教師自身が子どものロールモデルになれるよう努力すべきなのです。つまり、教師には「子どもにとって望ましい影響力を発揮するぞ」という意識が必要なのです。

「望ましい影響力」は、子ども集団によって変わります。積極性を育てたいなら教師が積極性を発揮すべきです。誰にでも優しく接する子に育ってほしいなら、教師こそ誰にでも優しく接するべきです。

子ども自身に集団の影響力を発揮させたいなら、先頭集団の頑張りを広めるのがよいでしょう。生活面で先頭を切って頑張る子を認めていきます。勉強面で先頭切って頑張っている子を取り上げていきます。

何か学級活動をするとか、作業するときに途中経過を報告するのも効果的です。できない子には個別指導をしておきます。すると、だいたいどの子も全体の平均程度、作業は進みます。そして、途中経過報告として「このグループはここまで進んだよ」などと、先頭集団を例にあげてほめるのです。そうすると、あのグループがあそこまで頑張っているなら、こちらも頑張ろうと周りへの波及効果が生じます。この場合、よく頑張っている子が「ロールモデル」になるのです。

教師がモデルになって教育効果が上がる場合と、同じ年代の子どもがモデルになって教育効果を発揮する場合があります。教師は所属する集団の影響力をどう活用するか考えなくてはならないのです。