ピア・サポート伝える輪広がる 高校生が中学生に、中学生が小学生に

高校生に指導を受けた中学生が出身小学校の児童にピア・サポートワーク。担任教諭も加わった
高校生に指導を受けた中学生が出身小学校の児童にピア・サポートワーク。担任教諭も加わった

ピア・サポートを学んだ高校生が中学生に伝える。その中学生が母校に行って小学生に伝える。静岡県立浜松江之島高校の山口権治教諭が自校で始めた実践の輪が、そんな広がりを見せている。同教諭が、実践の経緯や内容をまとめてくれた――。

◇――◇――◇

◇生徒会役員の言葉から教育過程に◇

静岡県浜松市立東部中学校では3年前から、ピア・サポートに取り組んでいる。いち早くピア・サポートを取り入れて実践した私の考えに賛同してくれて、本校の生徒が同中学校に行き、中学生を指導するのである。

ピアは仲間を指す。子どもたち同士が相互に支え合う活動がピア・サポートで、カナダが発祥。 回を重ねていくうちに「ピア・サポート活動を全校に広めたい」との同中学校の生徒会役員の言葉をきっかけに、教育課程に位置付けて実施するようになった。

このコーディネーター的役割を果たしているのが、同中学校の柳生美由紀養護教諭である。

同中学校区では6年前から「コミュニケーションの達人になろう」をテーマに、幼小中合同の学校保健委員会を継続している。学校保健週間や学級活動を通して人間関係のスキルの向上を図ってきた。「コミュニケーション能力を養うと仲間が増え、いじめがなくなる。生徒全員が楽しく、いきいきと学校生活を送れるようになる。コミュニケーション能力は大人になっても大切。仲間同士で問題を解決する力は、社会に出てからも生きる力になっていく」と同養護教諭は話す。

学校保健週間では、学級活動の時間を使って全学級がピア・サポートワークを行い、ワークの内容をピア・サポート班が、進行役は保体委員が務めた。「コミュニケーション能力には個人差があるが、苦手な人を上手にフォローしている人がみられた」とは、3年生の声。学年が進むにつれて、学級に一体感が生まれ、和やかな雰囲気になるのが分かった。

今年度は、生徒会主催の対面式や縦割りの結団式の中でもワークが取り入れられ、徐々に学校生活の中にピア・サポート活動が浸透し、生かされてきているという。

◇生徒が母校に赴く◇

初めての取り組みとして、浜松江之島高校の生徒からピア・サポートトレーニングを受けた中学生代表21人が、11月9日には、午後3時から4時まで、出身校である同市立相生小学校と飯田小学校に出向き、自ら学んだ内容を小学校6年生に伝える「ピア・サポート体験」を実施した。「中学生が小学生と良好な関係を築き、中学校入学後の中1ギャップの予防につながればよいと思う」と柳生養護教諭は語る。

企画や進行を担当するのは中学校2年生。ワークの進行は3年生が務めた。

まずは、じゃんけんゲームで楽しい雰囲気に。自然とコミュニケーション力がアップするようなゲームがテンポよく続くと、初めは緊張気味だった小学生たちからも笑みがあふれ、時には歓声が上がる。柳生養護教諭もゲームに参加しながら、子どもたちの様子を見守る。

最後には、小学生から事前に取ったアンケートを基に、中学生がその悩みや不安、質問に答える。答えの一つ一つに「東部中学校はこんなに楽しい学校だよ。中学生になるのを楽しみにしてね」というメッセージが込められていて、6年生たちは真剣にじっと聞き入っていた。

◇クラスが明るく◇

「ピア・サポート体験は、小6の児童にとっては中学校進学の不安解消になり、中学生にとっては活動を通して認められ、自己肯定感の高まりや他者への感謝の思いにつながる。相互にとって良い効果がある」と柳生養護教諭。

ワークの進行役を務めた中3の安藤冴華さんは「中学生になると仲の良い友達だけでなく、他のクラスの人や部活の先輩など人間関係が広がります。小学生の時とは比べものにならないくらいコミュニケーション能力が必要になるので、今回の体験を生かし、今のうちからトレーニングしてほしいです」と話す。

また元生徒会長の安藤拓真さん(中3)は「ピア・サポート研修をして3年目になりますが、1年生のころに比べてクラスの様子が変わってきたと思います。みんないろいろな人と話すようになったし、クラス全体が明るいというか平和になったというか、良い変化を感じます」。

さらに、「いままで、けんかの仲裁は先生の役割だと思っていましたが、これからはけんかが起きた場合には学んだことを生かしたい」と語る生徒もいた。

今後も思いやりあふれる学校風土を目指し、ピア・サポート活動を、学校を核に家庭へ、地域へと進化させながら続けていきたい。

 

関連記事